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2014/07/26

UN:日本の人権保障の弱さ

日本政府、特に安倍政権は、かねてから基本的人権とか法の支配という点において基本的価値観を欧米諸国と共有すると胸を張っているが、国連人権高等弁務官事務所からの勧告に真摯に向き合う姿勢はないのであろうか?

CCPR - International Covenant on Civil and Political Rights

111 Session (07 Jul 2014 - 25 Jul 2014)

こちらのJAPANの中に、Concluding Observationという文書があり、これはきちんと参酌する必要があると思う。

日本の人権状況について、上記の文書は積極的評価が可能な部分と消極的評価が必要な部分とを指摘している。

近時の日本の立法で積極的評価が可能な部分とは、以下のものが列挙されている。

(a) The adoption of Japan’s Action Plan to Combat Trafficking in Persons, in December 2009;

(b) The approval of the Third Basic Plan for Gender Equality, in December 2010;

(c) The amendment of the Publicly-Operated Housing Act in 2012, to the effect that same-sex couples are no longer removed from the publicly-operated housing system;

(d) The amendment of the Nationality Act in 2008 and of the Civil Code in 2013, which removed discriminatory provisions against children born out of wedlock.

 2013年の国籍法と非嫡出子相続差別規定削除が明記されているが、これに対しても自民党の議員たちに議論させると非嫡出子差別を止めるべきでないという意見が噴出した。「信念」などと言って時代遅れの認識に固執するのはやめてもらいたいものである。

また、以下の国際条約批准も積極評価を受けている。

(a) Convention for the Protection of All Persons from Enforced Disappearance in 2009;

(b) The Convention on the Rights of Persons with Disabilities in 2014.

さて、これに対して消極的評価を受けるのはどのような面か?

従前の勧告で履行されていない事項としては、国際人権規約が日本国内司法において正しく適用されていないこと、これを改善するためには弁護士、裁判官、検察官に対する研修が必要であることが再度指摘されている。
また人権擁護機関の設立について、2012年に立法が断念されてから再考する素振りが見えないが、どうしたのかと指摘されている。

男女平等に関しても、待婚期間や婚姻可能年齢に関する民法の女性差別規定を早急に削除すべしという。

男女平等に関する第三次基本計画の採択は評価するものの、その効果は低いとして、政治における女性の果たす役割の少なさ、被差別部落も含むマイノリティ女性の政治過程への参加に関する情報の乏しさ、パート労働者の70%が女性で、同等の男性の給料に比べて58%しか給料をもらっていないこと、妊娠出産を理由とする女性へのセクハラや解雇に対しての刑事罰の不存在が懸念事項としてあげられている。
そして第三次基本計画の履行状況をしっかりモニターして、実効的な措置、例えばクオーター制を臨時的にも導入するとか、マイノリティ女性の政治参加を具体的に進める措置をとるとか、セクハラ、妊娠出産を理由とする差別に対する適切な刑罰を定めろとしている。

ジェンダーに基づく家庭内暴力(DV)についても、レイプに対する訴追が少なく、親告罪であることの改善が見られないことや、DVに対する保護命令の発令が遅く、犯人の処罰例も少なく、同性カップルや移民女性の保護が不十分だと指摘されている。
具体的には、強姦の非親告罪化、同性カップルも含む全てのDVに対して捜査と犯人の訴追、有罪なら適切な刑罰を課すこと、そして被害者には緊急保護命令と、特に移民女性がビザを失うことを恐れて被害を訴えられない状況を防止することが必要だとしている。

その他、いわゆるLGBTに対する差別も問題があるとして、包括的な差別禁止法の採択により差別構造の是正に力を尽くすべきだとしている。

既に多く報道されているヘイトスピーチや人種差別問題についても一項が割かれており、その中には浦和レッズの「Japanese Only」横断幕問題も取り上げられている。
Japaneseonly

勧告は反ヘイトスピーチ法を制定して、「差別、敵意又は暴力の扇動となる、人種的優越又は憎悪を唱道するすべての宣伝を禁止するべきであり、またそのような宣伝の流布を意図した示威行動を禁止するべき」としている。

以上の他、死刑廃止、人身売買禁止、精神障害を理由とする強制措置入院の改善、代用監獄問題、難民の保護、イスラム教徒の監視問題、信教の自由に関する保護、基本的人権に対する公共の福祉を理由とする制限、特定秘密保護法、福島第一原発事故の処理、体罰問題、アイヌ先住民の権利が取り上げられている。

中には、ちょっと怪しいのがありそうで、例えば信教の自由については新興宗教に帰依した人を家族が監禁する行動を問題視しているが、例えばオウム真理教を思い出すならば、それが必要な場合もあろう。その他の新興宗教で霊感商法に精を出す連中とか、政治や教育に進出することに熱心なくせに背後霊だののお告げみたいなことを真顔で持ち出す連中とか、宗教の名を持って詐欺脅迫を働く連中の言い分を真に受けているとしか思えない一項がある。

しかし、総じて、現代日本において基本的人権が蔑ろにされている問題状況がかなりまんべんなく取り上げられているということができる。

不足しているとすれば、長期拘束取調べで取調べ過程の事後的検証すら不要としている自白偏重・調書偏重の刑事司法システムが槍玉に挙げられていない点が指摘できよう。

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