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2014/07/03

人質司法 (sans 可視化)現在進行中

ガスボンベ連続爆発事件を覚えておられるだろうか?
札幌市北区を中心として、警察やショッピングセンターなどが続けて小爆発した事件で、容疑者が逮捕されている。

昨日、その容疑者は4回目の再逮捕をされた。
ボンベ爆発 女を4度目の逮捕

札幌市で相次いだカセットこんろ用のボンベを使った爆発事件のうち、3つの事件で逮捕、起訴されている女が、今年1月、警察署の駐車場で起きた事件にも関わったとして、2日、再逮捕されました。 警察によりますと、女は容疑を否認しているということです。

この容疑者がやったと見られている事件は合計5件ある。実は逮捕されて身柄拘束された後も2、3件類似のガスボンベ連続爆発事件が起こっているが、そちらは模倣犯か共犯の仕業ではないかということで、彼女に関しては不問のようだ。

それはともかく、逮捕勾留され、逮捕が48時間、最初の勾留が10日間、それで処分が決まるというのが本来のあり方なのだが、勾留は一回延長できて計20日となりうる。つまり約22日間、密室の取調べを受ける。
これだけでも長過ぎて自白強要には十分すぎる効果があるわけだが、今回の容疑者については5回爆発があって、その全てが容疑となる。そして一度の逮捕の被疑事実を一回の爆発とすれば、約22日間の身柄拘束を5回、100日以上の逮捕勾留と取調べを続けることができるわけだ。

その間にどのような事が行われる可能性があるかというと、これまで数々の事件で取調べの酷い扱いが顕になってきており、しかもそれはほとんどが不問に付されている。取調べ過程で暴言、乱暴な態度での威嚇、情報を一方的に握った捜査官による誘導ないし誤導、場合により欺罔、利益誘導や関係者に迷惑がかかる云々による精神的圧力がテクニックとして用いられ、行き過ぎがあっても有罪判決が得られれば割り屋として賞賛され、無罪判決とか再審無罪とかになっても個人責任はほとんど追及されない。そもそも記録もされないので、口裏合わせれば露見もしない。自白が正しければ、その過程を問題にできる内部者などほとんどいないだろう。
加えて拘束中は警察の代用監獄で24時間、排泄も入浴も人前でさせられる環境に置かれ、解放される望みは繰り返される再逮捕のたびに打ち砕かれる。

今回の事件で容疑者が真犯人かどうかは私には全くわからない。
しかし、上記のような長期間勾留による自白の強要という捜査手法を可能にしている事自体が、およそ中世さながらの前近代的なシステムであり、「無実の人を100人巻き添えにしたとしても1人の悪人も逃さんぞ」という精神に毒されていて問題があると考えるものだ。

解決策の一つは、もちろん取調べの全過程の可視化であり、可視化がなされない限り供述調書の証拠能力を認めないとの運用をすれば明日にでも実現できる。
しかし長期間勾留による問題点の解決には、可視化だけでは十分でなく、刑事訴訟法の本来の精神である「100人の犯人を取り逃がしたとしても1人の無辜も罰しない」という線での運用に立ち戻る必要がある。ただしこれは法の要求であっても、法を運用する人々に受け入れられているかどうかが疑問というネックがある。
今回の事件でも、彼女が怪しいと思えば思うほど、処分保留で釈放することなど考えられないだろうし、仮に釈放したあとになってやはり犯人だったということとなれば、釈放を決めた担当者の責任が厳しく問われるだろうことは容易に想像がつく。

ともあれ、自白しない限り逮捕勾留を繰り返して取調べ続けるという「人質司法」を今日も目の当たりにして、改めて問題性を思うのである。

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