安倍首相の国家公務員女性比率3割以上はスゴいか?
女性が活躍できる社会というコンセプトには全く異論はないのだが、女性の国家公務員比率を3割にするという首相の発言には、ちょっと首を傾げざるを得ない。
要点は、今、もう三割くらいじゃないのか、幹部に女性が少ないことが問題じゃないのかということ。
もうひとつ、少なくとも国家公務員採用試験のレベルでは男性女性を区別しないで、成績によって判定することが公平だろうと思うが、その段階でアファーマティブアクションをやってしまうのは問題ありすぎるのじゃないかということである。
現在の国家公務員採用試験における女性の割合は、少なくとも昨年の統計によれば、以下のとおりだ。
全体
申込者: 133,209人中 38,017人(28.5%)
一次試験合格者:29,390人中 7,270人(24.7%)
最終合格者: 17,051人中4,684人(27.5%)
問題の幹部候補と思われる総合職はどうか。
区分がいっぱいあってまとめるのが難しいが、女性割合を以下のようにまとめてみた。
総合職大卒全体 文系/理系
受験者 32% 33%/26%
第一次合格 19% 20%/18%
最終合格 20% 21%/19%
総合職院卒
受験者 23%
第一次合格 16%
最終合格 21%
一般職大卒
受験者 31%
第一次合格 26%
最終合格 29%
高卒
受験者 29%
第一次合格 25%
最終合格 27%
これを見ると、全体として30%以上にするという目標は、ある意味で現実的、というかそれほど驚くべき数字ではない。27.5%に2.5ポイント上乗せするということなら、数の多い高卒で女性比率を高めることが早道だと考えないとも限らない。それでは女性がいきいき働く社会づくりという目標が歪んだものとなる。
また、分野によっては、最終合格者数のうちの女性比率が過半数を超えているところもある。それは人間科学分野で、数が少ないのだが、33人の合格者数中18人と、55%が女性で占められている。
それに、上記の統計によれば、全体に一次試験合格者より最終合格者数の女性比率が高いという興味深い結果もあるのだ。
ともかく、女性だって働くのは当然だとして、問題は、ガラスの天井、すなわち幹部職員にはなれないという現状であり、昇格・研修機会・途中退職圧力といった直接間接の差別と、採用区分による明確な差別とが原因となっている。上記のような現状に対して、あと少し女性を多くと人為的に操作するなら、高卒レベルの女性比率を高めるのが手っ取り早いので、ガラスの天井問題はかえって悪化する恐れもある。
さりとて、総合職分野の選考過程で直接的なアファーマティブアクションをするのは、憲法上も問題があるし、公務員を高い能力に保つという観点でも、成績の悪い人を良い人に先んじて合格させるというのは問題がある。
結局、優秀な女性が総合職を受験してもらうように、働き方の環境を整えるとか、リクルートを工夫するとか、地道な努力をするしかない。それによって受験生の中では32%が女性だったのが一次合格者の中では19%しか女性がいないという現状を、より優秀な女性に受験してもらうことで、合格者の女性比率を高めるよう努めるしかない。
数値目標を掲げることはよいが、それに振り回されて、その達成が自己目的化して自己撞着に陥る愚を避けなければならない。
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コメント
全国異動は言われるほどないだろうけど、国会待機で終電にも乗れない生活が続くらしいけど女性が耐えきれるのでしょうか?女性だけ深夜勤務免除にする裁判所方式を採用するのかな?
投稿: キャリアって | 2014/07/14 01:05