UNIV:学校教育法の改正法成立
改正学校教育法では、学長主導で大学改革を進めるため、多くの大学で事実上の意思決定機関となってきた「教授会」の役割を見直して、教育研究に関する事項を審議し、学長に意見を述べることなどに限定するとしています。
施行は来年4月からということで、身近な問題のはずだが、よく知らない。というよりも、目を背けていた感はある。
文科省の法律案等のページに掲載されている法律案概要が最も端的に改正趣旨を明らかにしている。
従前は、教授会が審議機関として位置づけられていたところを、今後は原則として意見を述べる機関となるということである。
少なくとも法律の文言からわかるのは、基本的な位置づけが変わるということと、特に学生の入学や卒業、学位認定等について、教授会の審議から意見を述べることに明文をもって変わったということだ。それから、重要事項の審議機関から、重要事項について学長が教授会の意見を聞くべきと判断した時に意見をいう機関となったのも見逃せない。
追記:以下の部分は当の昔に国立大学に適用がなくなっていたので、削除。ご指摘有り難うございます。
この限りではよくわからないのが教育公務員特例法に定められた大学教員の任命、要するに教員人事を教授会の議に拠らせている体制を見直すのかどうかだ。
教員の採用については実質的な審査決定をピアレビューで選んできたのであり、それを支えてきた法規定は同法3条5項の「教員の採用及び昇任のための選考は、評議会の議に基づき学長の定める基準により、教授会の議に基づき学長が行う。」という条文である。
こちらの方の変更も今後やってくるのであろうか?
ともあれ、大学という組織が、比較的フラットな構造で、構成員レベルからの自主的な創意工夫と主導権を持って学問研究教育を行うというボトムアップ型な組織原理で来たところが、組織原理的にはトップダウン型に転換し、内容的には外来的な圧力に流されて動くことを旨とする機関に転換するというわけである。
追記: 正確さを期すために条文を引用。
93条1項
大学に、教授会を置く。
2項
教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする。
一 学生の入学、卒業及び課程の修了
二 学位の授与
三 前二号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必
要であると認めるもの
3項
教授会は、前項に規定するもののほか、学長及び学部長その他の教授会が置かれる組織の長(以下この項において「学長等」という。)がつかさどる教育研究に関する事項について審議し、及び学長等の求めに応じ、意見を述べることができる。
要するに教授会は以下の役割を担う。
(1) 学長に意見を述べる事ができる事項
学生の入学、卒業・修了、学位授与
(2) 学長が教授会の意見を聴く事が必要と判断した場合に意見を述べることができる事項
「教育研究に関する重要な事項」
(3) 教授会が審議する事項、そして学長の求めに応じて意見を述べる事項
学長が司る「教育研究に関する事項」
要するに、
・ 重要な事項については学長が任意的に教授会の意見を聴くが、審議はしない。
・ それ以外の事項については教授会が審議権を有するし、学長の求めに応じて意見も言える。
というわけである。
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