研究データ改ざんで薬事法違反(誇大記述・広告)
一見すると産業スパイ事件か、それとも小保方・理研問題の一種かにも見えるのだが、実は消費者問題であった。
発表によると、ノバルティスファーマ社で大学の研究などを担当する部門の担当部長だった容疑者は2010年11月~11年9月頃、データ解析に関わった京都府立医大の臨床研究で、ディオバンを使用した場合には脳卒中の発症率が低くなったなどとする虚偽の図表を作成し、研究者側にデータを提供。11年1月~10月頃、虚偽データを基に、研究者に論文を書かせた上、海外専門誌に投稿させるなどして、ディオバンの効果・効能について虚偽の事実を示した疑い。
要するに薬の宣伝のために、虚偽データを研究者に渡して効能を保証する論文や提灯記事を書かせたというものであり、これが薬事法違反となるというわけだ。
薬事法
(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。2 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
さすがに安全に気を使う薬事規制だけあって、「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事」というのは虚偽誇大記事の広告に当たるという念の入れようだ。
これで思い出すのがクロレラと景表法違反の消費者団体訴訟である。
→【サン・クロレラ「研究会」チラシの裏表(2)】消費者団体、厳しい裁判
適格消費者団体の京都消費者契約ネットワーク(事務局京都府、高嶌英弘理事長)が、サン・クロレラ販売(本社京都府、北澤誠一社長、以下サ社)を相手取って起こした団体訴訟が業界で注目を集めている。「日本クロレラ療法研究会」という団体名で配布した折り込みチラシで、特定の成分が、がんなどの治療に効果がある旨を訴求。資料請求してきた顧客にサン・クロレラ販売の商品を案内する行為が、景品表示法上の優良誤認に当たるかどうかが、訴訟の争点となっている。サ社側は、チラシに特定の商品や企業名の掲載がないことなどを理由に、景表法には該当しないと主張。一方、原告側は、サ社と、「日本クロレラ療法研究所」の実質的な一体性などを根拠に、「違法性は明確」と主張している。有識者3人に今回の訴訟のポイントを聞いた。
差止請求書.pdf参照。
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