NETバンキングの不正送金と補償制度
このところ、ネットバンキングの不正送金による被害が急増しているという。
実際、このブログでも昨年の8月にネットバンキング被害急増のニュースを取り上げている。
それ以来、被害は更に拡大の一途であり、時事:不正送金、既に最悪被害=ネット銀58行で14億円-法人口座急増、標的拡大に見られるように、2013年の過去最高の年間被害額だった14億円が2014年は5月で早くも塗り替えられたという。
このように犯罪の激増は極めて憂慮すべき状況にあり、これらの犯罪収益は当然ながら反社会的勢力に流れ込んでいるであろうから、そうした勢力の伸張も憂慮・警戒すべきである。
しかし、最近の報道では、利用者個人がネットバンキングの不正送金の被害を受けるかのようなトーンで報じられているのが気になる。上記の過去エントリーでも紹介したように、ネットバンキング利用者個人は、過失がなければ、不正送金被害について補償を受けることができる。そして、全銀協のまとめによれば、9割以上の被害について補償がされているのである。
盗難通帳、インターネット・バンキング、盗難・偽造キャッシュカードによる預金等の不正払戻し件数・金額等に関するアンケート結果および口座不正利用に関するアンケート結果について
この中の別紙2.pdfには、ネットバンキングの被害状況に関するアンケート結果が紹介されているが、その後半には、「インターネット・バンキングによる預金等の不正払戻しにかかる補償件数等について【個人顧客】」という表があり、補償率は90%から100%の間を推移している。過去最高に伸びた昨年は99%の補償率である。
この補償の根拠となる法律は、実はオンラインバンキングには直接適用のないATMで偽造カードによる不正払戻しが対象の預金者保護法(偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律)であり、この法律に基づく補償を自主的にオンラインバンキングにも適用しているわけである。→全銀協の申し合わせpdf
この自主的な取り組みがされた当時は被害がこれほどまでに拡大するとは思っていなかったであろうから、銀行が音を上げることはあり得るが、ともかく現在までのところほとんどの場合は補償がされている事がわかる。
さて、この補償制度については、最近のマスコミ報道では言及されない。
大体において、ネットバンキングの不正送金の被害が増大していることを伝え、利用者に一層の注意を呼びかけるということで終わっている。
これは、おそらく、補償があることを伝えることで利用者が不正送金防止のための注意を払わなくなることを恐れてのことではないかと思う。銀行や警察の立場からすれば、それも無理からぬ事だ。
しかし、現に被害にあった人が、補償されることを知らずに泣き寝入りすることもあり得るし、警察には届けたが銀行には補償を要求できることを知らないで要求せず、銀行も敢えて積極的には勧めないということもありうる。
利用者側が可能な限りのセキュリティ措置を講じることは、一年前のエントリでも言及したように、利用者の義務であり、怠っていれば上記の補償すらも重過失として受けられなくなることがあり得るので、補償制度があること、補償されるにはきちんとセキュリティ保持のための対策を自分で執ることが必要なことを、きちんと伝えるべきである。
なお、やや古いが、こちらの記事も参考になる。
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