lawyer:いわゆる典型的な非弁提携
元理事長は都内に弁護士のために事務所を用意し、事務員らも派遣していた。弁護士らが消費者金融会社と交渉し、過払い金はいったん弁護士名義の口座に振り込まれるが、この口座は事実上NPO法人が管理。元理事長はここから利益を得たうえで、弁護士には月に50万~100万円程度の報酬を支払っていたという。元理事長は2008年以降、少なくとも3千人以上の顧客を7人の弁護士にあっせんし、約3億8千万円の利益を得ていたという。
司法制度改革で仕事にあぶれた弁護士が、整理屋に雇われてしまったという構図である。
しかし、少なくともこの記事では、ロースクール出身の若い弁護士が愚かにも引っかかったということではなさそうで、旧司法試験を経た「優秀」なはずのベテラン弁護士たちが、整理屋に雇われている。
記事は「仕事を得られない弁護士が違法行為に走らない対策が求められている。」で締めているが、その対策としては記事中で倫理研修を強化したいという指摘がだされている。
しかし巷では、要するに弁護士の新規参入を絞って、弁護士数過剰を解消し、仕事にあぶれる弁護士を出さないようにしようという声が大きくなってきている。
典型的な競争制限による質の保持という議論であるが、弁護士職には営利企業のような「競争」が適切ではないという議論がなされている。
確かに、大部分の刑事裁判や法律扶助を必要とする事案、公益に資する様々な訴訟事件について弁護士を担い手として期待する以上、自由競争では採算が取れないこれらの事件を蔑ろにするだけで、良い結果には結びつかない。
他方で、弁護士の数が少なければ、これらの事件の担い手も少なくなるわけで、赤ひげ先生信仰のようなかつての姿で上手くいくとは思えない。
弁護士を増やせば自然と地方にも弁護士が行き渡るだろうというのが幻想であり、机上の空論であったことは確かだが、そもそも弁護士の数が足りなければ、地方に弁護士が足りない、あるいはいないという状況になるのも当然である。
結局のところ、司法予算を拡充し、民事刑事の法律扶助を充実させて、上記のような整理屋の仕事を官ないし公で行うということが求められる。要するに法テラスの拡充ということになるが、法テラスの報酬体系の歪みと乏しさを正すことも必要だ。公益事務所のあり方も考える必要がある。
さらには、訴訟制度を改革し、公益的な事件の提訴に強いインセンティブを与えることも重要だ。訴訟のみならず、裁判外の交渉による問題解決を促進していくことも忘れずに。
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