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2014/06/29

BAR:弁護士会の懲戒は身内のかばい合いで効果なしか?

一般にはそのように思われている。

しかし、弁護士さんたちは、これを肯定することは少ない。

ところが、福岡県弁護士会で起こった事件は、横領罪で服役中の元弁護士が、被害者の調査に協力して実態を 「調査に訪れた弁護士会の幹部は顔なじみばかり。厳しい追及はほとんどなかった」と証言しているという。

西日本新聞:弁護士会の怠慢問う 福岡の詐欺事件 被害者 賠償求め提訴

あの愚かな大阪市長がタレント弁護士時代にテレビで視聴者に弁護士会懲戒はだれでも申し立てられると煽って以来、その存在だけはかなりよく知られるようになった弁護士会の懲戒という制度だが、一般の会社による懲戒免職などとは文字は似ていても全く非なるものであり、おそらくは世間的に理解されているとは思えない。
まずは、弁護士会と弁護士との関係からして、懲戒免職の類推で雇用関係ないし使用従属関係にあるのではないかという誤解が先に立ちそうだ。

弁護士会は強制加入団体で、弁護士職を行使するには必ず登録しなければならず、除名処分や退会命令といった懲戒処分をくらうと、弁護士としての職務を行使することが出来なくなる。丸めて言うなら弁護士資格を失うわけだ。

その根拠は、弁護士法という法律にある。
弁護士法は、弁護士会という存在によって弁護士の高度な自治を認め、国家権力から独立した存在として弁護士を位置づけている。

その理由は、以下のとおり。
弁護士は国家権力とも対峙して法律上の闘争を行うことが期待される。法務省=検察庁とは、刑事裁判において原則として敵味方となる。国民一般目線で言えば、国家権力による人権侵害に対して代理人・弁護人となって戦ってくれる頼れる味方なのである。
裁判所との関係でも、裁判を受けるという意味では裁判所が優位な立場に立っている。しかし場合によっては裁判所の見解に反旗を翻し、依頼人や被告人の利益を図るために主張立証を行い、判決に対しては不服申立てを行い、裁判外でも世論に訴えたりする。
立法過程の中でも、社会正義の実現のために行為せよと弁護士法は弁護士に求めており、弁護士会なりの社会正義にかなう立法を促進する方向で、逆に正義に悖るような立法はさせないように、行動する。

弁護士とはそういう存在なのである。
従って、その弁護士が国家(特に行政・司法)により監督されたり、非違行為に対する懲戒処分を受けたりすれば、上記のような独立して職務を行い、行政の見解にも必ずしも従わず、あるいは裁判所の見解にも逆らうことのできる存在ではなくなってしまう。

かくして、弁護士については弁護士会が自治権をもって、非違行為に対する懲戒処分も弁護士会が行う。もちろん治外法権というわけではないので、弁護士会の懲戒処分が不当であれば、裁判所が処分取り消しの行政訴訟により最後は判断する。
また、懲戒処分の過程は、綱紀委員会で懲戒相当かどうかを決め、懲戒委員会でその処分内容を決めるという二段構えであり、綱紀委員会にも懲戒委員会にも弁護士以外の外部委員として大学教授、裁判官、検察官などが加わっている。全くの身内のお手盛り処分という訳にはいかない。

ただ、実際に調査に当たるのは弁護士であるので、そこで手心が加えられて他の委員、特に外部委員の目が届かないという可能性はある。弁護士の数が少ない単位会では、確かに顔見知り同士で、懲戒申立てを受けた側と調査担当弁護士とが親しいということもあるだろう。外から見れば、勘ぐれば勘ぐりやすい構造でもある。

しかし、今回のようなケースでは警察ないし検察だって黙っちゃいないわけで、身内をかばうということがあったとしても犯罪行為は庇えるものではない。とはいえ、警察ないし検察のような強制捜査権限があるわけではない弁護士会の調査では、常に警察に先んじて処分をせよというのは無理難題だ。
そして犯罪行為とはならない弁護士倫理上の問題ある行為は、評価が分かれる問題でもあるので、弁護士の処理に不満な人々の立場から見ると弁護士会の見解がいかにも身内びいきに見えてしまうという構造も否定できない。

そういうわけで、今のところ弁護士会自治に期待し、可能な限り身内のかばい合いがしにくい構造を取り入れるということ(例えば既に単位弁護士会の決定は日弁連の調査に服することになっている)ぐらいで、弁護士会が懲戒処分をするという基本的な構図に代わるものは見いだせないのである。

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