arret:再生手続と相殺
民事再生手続において、投資信託受益権の解約金請求権と保証債務履行請求権とを相殺することが相殺禁止規定の例外に当たらないと判断された事例である。
事実関係は以下のとおり。
平成12年から19年にかけて、XがYから投資信託受益権を購入。
平成20年11月までにYはXに対する保証債務履行請求権約6000万円を取得。
平成20年12月29日、Xが支払いを停止し、Yはその事実を知った。
平成21年3月23日、Xに対する保証債権の保全のため、Yは債権者代位権の行使としてXの投資信託受益権解約通知を行い、これに基づいて投資信託委託会社に解約通知があった旨を通知し、同月26日、信託会社から解約金約700万円がYに振り込まれた。これによってYはXに700万円の解約金支払債務を負担した。
平成21年3月31日、YはXに対して相殺の意思表示。
平成21年4月28日、Xは民事再生手続開始の申立てをなし、翌5月12日に再生手続開始決定。
XがYに対して投資信託受益権の解約金の支払いを求める訴えを提起し、第一審は請求認容、これに対して控訴審名古屋高裁は、本件債務負担が相殺禁止の例外としての「支払の停止があったこ とを再生債権者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に該当するとして、Yの相殺の主張を認め、Xの請求を棄却した。
これにXが上告受理申立てをして受理された。
最高裁は、原判決を不当として破棄し、控訴棄却、つまり一審の請求認容判決を支持する判断をした。
理由は、以下の諸点に分けられる。
・解約実行請求がされるまでは、Xが有していたのは投資信託委託会社に対する受益権であり、この受益権に対しては全債権者が責任財産としての期待を有していた。
・解約実行請求による解約金債権も、それまでの受益権と同等の価値を有するものである。
・解約実行請求は支払停止をYが知った後になされたのであり、Yが相殺の担保的機能に合理的な期待を有していたとはいえない。
・また受益権の管理をYの口座において行っていたことも、Xはこれを他の金融機関に移すことができたものであり、受益権解約金債務をYが負担することが確実だったわけでもない。
・解約金債務を負担するに至ったのは、他の債権者と同様に、Xに対する債権者代位権の行使をしたからであった。
以上の理由から、以下のように判示した。
被上告銀行が本件債務をもってする相殺の担保的機能に対して合理的な期待を有していたとはいえず,この相殺を許すことは再生債権についての債権者間の公平・平等な扱いを基本原則とする再生手続の趣旨に反するものというべき である。したがって,本件債務の負担は,民事再生法93条2項2号にいう「支払の停止があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たるとはいえず,本件相殺は許されないと解するのが相当である。
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