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2014/05/27

アントンピラーオーダーが使われた例

巨人対清武裁判で「アントンピラ命令」が登場した。

読売:清武元巨人代表、機密データを海外持ち出し

清武氏は11年11月、巨人軍の取締役を解任された。その後、巨人軍などの内部調査で、清武氏が在任中、読売新聞東京本社の未掲載原稿を無断で当時シンガポール在住の知人女性にメールで送信していたことが判明。このため、東京本社は12年10月、アントンピラ命令と呼ばれる証拠保全手続きをシンガポール高裁に申し立て、女性宅のパソコン内のデータを差し押さえた。

巨人のオーナー会社の新聞が書くことなので、詳しさとともに偏りも響いてくるトーンの記事だが、訴訟手続的には興味深い。

アントンピラーオーダーとは、イングランドの法廷が証拠収集のため訴訟当事者に対する捜索を認める命令である。
Anton Piller KG v. Manufacturing Processes Ltd (1976) 1 All E. R. 779

日本の証拠保全、あるいは提訴前の証拠収集処分に相当する手続だが、それよりは幅広く強制権限が認められている。
そして、この手続が英米法諸国に広がっている訳だが、外国での訴訟手続に提出するための証拠を捜索するためにアントンピラーオーダーを申し立てることができるのかというのは、かねてからの一つの論点であった。

この種の問題は、ディスカバリについても存在する。アメリカの訴訟でディスカバリのために在外当事者の情報提出を義務付け、その不履行にアメリカで制裁を発動するというのでは、その当事者が住む国の主権を侵害するものではないかという点、あるいはディスカバリとして在外証拠・証人の取り調べ・召喚を郵便などで直接通知することは主権侵害ではないかという点と並んで、ディスカバリにより得られた情報を海外の関係事件で証拠として用いることは、ディスカバリの前提とする情報保護を侵害するおそれがあるのではないかという点などが論じられてきた。

そのコロラリーとして海外の訴訟で使う証拠を英米の証拠収集手段によって収集しようとすることが正当な目的といえるかどうかが議論されてきた。

日本ではほとんど論じられていないが、ドイツでは一定の議論の蓄積があり、ドイツ民訴学者の論稿が幾つか紹介されている分野である。

上記記事の内容の限りでは、シンガポールの裁判所は日本での訴訟に用いる証拠をシンガポールのアントンピラーオーダーにより収集することに好意的であること、そして日本の裁判所はそのようにして得られた証拠について抵抗感なく受け入れることが分かる。

電子証拠についても同様であるだけに、国際的な広がりのある事件では極めて重要な先例である。

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