Book:最終陳述
法坂一広さんの面白い小説が、今度は裁判員裁判と冤罪に切り込む。
たまたまだが、遠隔操作ウイルス事件の帰趨を思い出させるストーリー展開だが、方向は逆。つまり自白していた被告人が最後に否認に転じるというパターンである。
邪悪な性格を割り当てられたはずの裁判長が、結構軟弱だったり、厳しい体育会系的上下関係の割には検事さんが結果的にノビノビとやっていたり、最後の被告人陳述の時に傍聴人が「俺が真犯人」だと言って裁判員たちが動揺するというのがキーポイントだが、そんな事態が頻発すれば裁判員制度は崩壊すると真顔で心配するところなど、ちょっとどうかと思う。
しかしそれを補って余りあるストーリーの面白さだ。
色々消化不良な要素もある。刑事弁護専門を謳って全国に支店を広げる法律事務所とその採用3年目の勤務弁護士とか、ツイッターなどでおなじみとなっているフリージャーナリストを彷彿とさせる人物とか、掘り下げて欲しかった、というか今後掘り下げモノが期待される。
ともかく、寝不足になる一冊だった。
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