law:日本法データベース比較2014
また今年も、北大の法情報学の授業ではTKC、Lexis Nexis、Westlawの各担当者にお出でいただき、講習を兼ねた授業を開催した。
法科大学院生の新入生も研究大学院の新入生も減りつつあり、コンピュータ教室の定員にみたない履修希望者数となってしまったので、心苦しいのではあるが、やはり私が説明するよりは一通りプロに説明してもらって、私がそれを踏まえて授業で利用する方がよい。
ところで、二年前のこの時期にもlaw:日本法データベース比較として簡単なエントリを書いた。
その時は、私と著名な同僚との名前で、文献書誌データに何件登録されているかを調べて比較してみた。
町村泰貴 W86件 D109件 T116件 多産な同僚 W166件 D176件 T171件
比較の対象は、日本法に関するデータベースで北大のWestlaw JapanとD1 LawとTKCだが、2年前の段階ではWestlaw Japan、正確には日外アソシエーツは水を開けられていた。
今の時点でその数字はどう変わったか、だが、以下のとおりである。多産な同僚が誰であったかは忘れてしまったので、私の分だけの数字である。
W 133件 D 122件 T 128件
驚くべきことに、Westlaw Japanが他の2つを超えて収録しているではないか。
しかし日外アソシエーツがそんなに法律文献に力を入れて書誌データを集めるとは思えないので、ちょっと信じられない数字である。
そこで、特にWestlaw JapanとD1 Law(法律判例文献情報)とのそれぞれから私の名前での文献を全部ダウンロードして、比較してみた。すると、D1 Lawに乗っているにも関わらずWestlaw Japanには載っていない文献がかなりたくさんあることが判明した。D1 Lawの最初の50件のうち、Westlaw Japanに載っていない文献は、22件を数える。これは少し多すぎにも思う。するとWestlaw Japanの方が数が多いのはどういうことであろうか? Westlaw Japanの方では、例えば法学セミナーに書いた論考がのきなみダブルカウントされている。つまり一つの論文が二回でているのだ。これは文献の拾い方に何らかの問題があるようである。
しかし、D1 Lawが完璧かといえば、それはそれで問題がある。二年前から今年まで12件しか増えていない事自体、私がサボっているせいもあるかも知れないが、やはり収録されていない文献があるのである。
例えば、単行本の中で分担執筆したもの、このブログでも紹介した中田・鹿野編『基本講義消費者法』は収録されていないし、個人的には心血を注いだ『法はDV被害者を救えるか ―法分野協働と国際比較 (JLF叢書 Vol.21) 』も出てこない。
そういうわけで、文献を探すには、いずれのデータベースもまだまだ網羅性が欠けていると言わざるをえないのである。
なお、判例の収録数は以下のとおりで、Westlaw JapanとTKCとが相争っている状態である。
W 249,394件 D 225,530件 T 255,076件
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