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2014/02/18

韓国のDV対策法・予習メモ

韓国のDV対策は、我が国でも既に多くの文献で紹介されている。

基本的なところをまとめると、1997年に制定された2つのDV対策法が、その基本となっている。

一つは「家庭暴力防止および被害者保護等に関する法律」であり、もう一つは「家庭暴力犯罪の処罰等に関する特例法」で、前者はDV防止法などと、後者はDV特例法などと略される。
この2つの役割は、DV防止法の方が被害者に対する相談や保護と、そのための制度作りを担い、DV特例法の方は加害者に対する刑事処分または保護処分を創設するものである。


いずれの法律も、2007年に改正がなされた。

DV防止法の方は、目的規定が被害者保護と健全な家庭の育成の2つが掲げられていたが、2007年改正により、被害者保護に純化させられた。
この点に関する議論は、我が国のDV対策においてもよくよく念頭におくべきである。家庭内の暴力行為が防止されるべきだということには異論の余地がないとしても(ここでもちょっとぐらい許されるという向きもあり得るが、それは論外として)、しかし同時に幸せな家族関係の形成という目標を掲げることは、それ自体反対しづらい事柄だけに、暴力防止の目的が減殺される可能性がある。

本来は、DVのない家庭というのが健全な家庭というべきで、そう捉えれば、暴力防止と健全な家庭の育成は矛盾しない。しかし、DVがあっても家族・家庭の秩序維持を優先することを「健全な家庭の育成」に含めてしまえば、結局DVはあっても離婚するな、被害者はちょっとぐらい我慢しろ、ということになり、被害者保護が交替してしまうというわけである。

そしてこのことは、理屈の上だけの危惧ではなく、1997年から2007年に至る間に韓国で現実に起こったことであり、これが目的規定からの大改正に結びついたと指摘されているのである。

なお、DV防止法はそのように目的規定を被害者保護に純化したが、DV特例法の方は、2007年改正が部分改正にとどまり、目的規定は依然として被害者保護と健全な家庭の育成の二本立てになっており、その弊害が続いていると批判されている(キムウンギョン氏)。

何をもってDVというかという定義問題では、家族間の暴力をすべて含むので、児童虐待や老人虐待もDV関係に含まれる。ただし、これらには特別法があるので、DV防止法や特例法を適用しない扱いになっている。
また、暴力の定義は、暴行傷害のほか、監禁、脅迫なども含まれ、日本の保護命令対象事件よりも相当に広いということができる。

DV特例法は、DV加害者に対する司法的な処分として、保護処分を創設している。これは民事でも刑事でもない特殊な処分であり、日本の保護命令と同様の接近行為の制限や電気通信を通じた接近行為の制限があるほか、以下のような処分がある。
・被害者に対する親権制限
・社会奉仕・受講命令
・保護観察
・保護施設への監護委託
・医療機関への治療委託
・相談所等への相談委託

この保護処分がくだされると、同一事実に基づく刑事処分は行われず、保護処分の不履行に対しては刑事処分が予定されている。

こうした保護処分の可能性を設けたことについては、当然ながら、DVを軽微な案件と考える風潮を招くとの批判がある。また、被害者が加害者に対する刑事処分を望まないという問題に対しても、刑事処分ではないから被害者が遠慮しなくなるという効果が期待され、そうなっているという意見もあるが、刑事処分かどうかは一般の人に理解されず、結局司直の手に委ねることへの抵抗感があるのだという意見もあり、実際の所はよく分からない。

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