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2014/01/22

consumer:PM2.5はアメリカ消費者にも責任あり

中国の大気汚染、米消費者にも一部責任 国際研究

当然のことだが、中国の米国消費者向け輸出産業が大気汚染源の一翼を担っているという趣旨の研究論文が、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academyof Sciences、PNAS)に掲載されたというニュースである。
アメリカの消費者のみならず、中国製品の安さを享受している消費者なら、日本も含めて共通の問題だ。

これは安い輸入品が南北問題の貧困を生み出しているというのと類似の問題状況であり、なかなか難しい。

自らの環境基準を蔑ろにしつつ、安い輸出品を生み出している中国政府と中国企業を嗤うことまではできても、消費者の行動により上記の構造を変えていくのは困難だ。

国内の労働問題の経験や環境問題の経験を振り返っても、労働問題と環境問題は類似の経過をたどっている。

1)低廉な労働力の酷使
 自然環境の汚染・収奪
    ↓
2)競争力を獲得
    ↓
3)労働者の地位向上をめぐる争議・訴訟
 公害被害者の救済のための運動・訴訟
    ↓
4)団体交渉・争議による労働基準の底上げ獲得
司法・交渉を通じた救済事例の積み重ね
    ↓
5)立法による行政規制の導入強化

少々単純化がすぎるかもしれないが、大体の経過はこういうところであり、労働問題については18世紀から(1)(2)の状況が進行し、19世紀後半から20世紀前半にかけて(3)(4)(5)を通ってきた。

環境公害問題についても、同様に産業革命以降の課題だが、日本においては20世紀初頭から(1)(2)の問題が顕在化し、足尾のように(3)の段階に至ったところもあったが、戦後経済成長において再び(1)(2)が繰り返され、深刻化し、昭和40年代から(3)以降の段階に至った。

そしてこの経過は、油断をすると、日本社会であっても常に(1)(2)の問題が顔を出す。労働問題については、グローバリズムと国際競争力の獲得というお題目で志向されているのは(3)以前の状態に立ち戻りたいということにほかならない。

これが国際レベルとなると、(5)が条約・国際協定により実現されないと、競争力の罠から逃れにくい。そのことは、経済統合を進めるEUにおいて、特に労働基準や環境基準についてEUレベルの立法が進んでいくことにも現れている。
EUのような枠組みがない中で、労働力や環境を収奪して競争力を発揮している国があるときに、どうしたらよいのか、自国内で(3)以降のプロセスを辿ってもらうしかないのか、国際環境法の生成を国家間交渉によって進めるしかないのか、いずれも困難で先が見通せない。後者は地球温暖化防止をめぐるブロセスでも目の当たりにできるが、環境保全を推進しようとする国の中にも同じ穴のムジナというか、環境保全が目的なのか自国産業保護のために相手国へ高い環境基準を押し付けようとしているのか、ないまぜとなっているところがあるだけに、期待値は低い。

国際的なNGOによる交渉・争議というのも、労働問題の経験では、革命思想により自壊したという歴史がある。この負の遺産が、未だに独裁国家の形で国際的困ったちゃんになって残っている。
環境問題について、被害者の国際的な連帯とか、国際的非政府組織による争議・交渉、あるいは個別救済のための訴訟などを通じて、つまり上記の(3)のプロセスを国際レベルで動かして、(5)に至ることが当面考えられるが、問題は国際レベルで(4)の可能性がない、あるいは弱いという部分である。

ともあれ、こうしたことをつらつら考えると、冒頭のニュースも、中国の大気汚染はアメリカの消費者が中国製品を求めるからと言われても、「そりゃそういう面もあるかもしれないけど、だから何?」といった感想しか浮かばないのである。

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