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2013/12/23

univ:京大で学長選挙を止める?

高山佳奈子・京大教授のブログ「京大で総長選挙廃止へ」京大総長選挙廃止に反対する署名をお願いします

このブログだけではさっぱり分からないが、リンクされている教職員組合のページには以下のように書かれていた。

京都大学職員組合が京都大学総長選考会議(学内委員 6名、学外委員 6名によって構成)の学内委員複数名から確認したところによると、先日開催された総長選考会議において総長選における学内教職員による意向投票を今後廃止し、総長選考会議のみの議決によって京都大学総長を選出すること及び総長の任期を現在の 6年からさらに再任できるようにするという議題が提出されたということである。そして、なんと来週 12月 25日(水)13:00~15:00に開かれる次回総長選考会議においてこの議題についての採決を強行しようとしていることが判明した。

世間ではどのように思われているか分からないが、大学の学長(一部大学では総長と自称している)は、基本的に教職員の投票により選出するというのが原則的形態となっている。そしてそれがいいんだというのが、多くの大学構成員の見解であった。その根拠は、大学の自治が良いことであるという信条であり、大学の自治は学問の自由の砦となっているという考えである。
少なくとも憲法学においては、そのように考えられてきた。

しかし、この考え方に対しては、色々な突っ込みどころがあり、最近は評判が悪い。

にもかかわらず、95%の国立大学では、学長選挙が行われ、原則としてその結論に基づいて学長選考会議が結論を出す。選挙による選出ではなく選考会議による選出という建前から、学内意向投票と呼ばれているが、投票結果と異なる結論を学長選考会議が出せばスキャンダルともなるので、まだまだ実質的な学長選挙である。

参考資料pdf:学長の選考方法(国立大学)

上記資料の中で、学内意向投票を実施していない例として出されているのが、東北大学である。

Tohokugakucho

さて、京大が学長選挙方式を止めてしまうというのは、ニュースとしてショッキングだ。というのも京大のイメージは、東大が文科省直轄の官僚的大学なのに対して、京大は自由と反権力の砦というものだったから。しかしそのイメージは間違いだったということなのかもしれない。

実質的に考えて学長選挙方式がいいのかどうかは、議論の余地があるし、それだけですべてが決まるというものでもない。日本国憲法が「第二十三条  学問の自由は、これを保障する。」と定めていることは前提として考えるにしても、学長を教職員の投票により選出することが学問の自由の保障に直結するわけではない。

大学の自治モデルが理想的に機能する前提には、以下の様な因果が想定されている。

学内民主的正統性を有する学長の下での執行部が大学の自治と学問の自由とを制度的に保障するように行動する。
   ↓
その下で、教員が自らの学問と教育とに自由に取り組む。
   ↓
優れた学問業績と人材育成が実行される。
   ↓
大学に対する社会的な評価が高まる。
   ↓
学生や寄付が集まる。

こうしたモデルには、上でも書いたが突っ込みどころがたくさんある。
大元の学長選挙は、果たして学内の民主的正統性を有するといえるか? 理念ないし制度としては民主的に正統だが、教職員の意思を反映する存在なのか? 
また、仮に民主的な正統性を有する学長が選ばれるとしても、その人は大学の自治と学問の自由とを制度的に保障するように行動してくれるか? そもそも大学の自治と学問の自由とは矛盾の芽を孕んでいるのではないのか?
また、学問の自由を全面的に保障するように行動する執行部の下で、教員各自は本当に学問に打ち込むのか、教育にも打ち込むのか?
学問に打ち込むことと教育に打ち込むこととは、部分的には同じ方向を向いているが、やはり時間的には対立するのではないのか?
そもそも各教員が自由に学問に邁進しても、常に優れた学問業績に結びつくとは限らない。
各教員が自由に教育に邁進しても、学生がその教育効果を発揮するかどうかも、一概には言えない。
そして社会的な評価と学生募集、あるいは寄付がつながっているかどうかも疑問がある。

これらの疑問は、いうまでもなく、学長選挙を止めて学長選考会議の選考に委ねれば上手くいくというものでもないことも示している。

ま、不可知論で現状維持を狙うということにもなりそうではあるが、お前の意見を言えと言われれば、とりあえず美しい民主的正統性の理念に適った学内投票方式の維持を支持しておく。問題はそこではなく、学問研究の自由と大学の存在意義の両立をどう進めるか、具体的施策の当否にあるのである。

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