googleのECサイト信用担保システム
グーグルは、インターネット通販の信用性を評価し、優良サイト認定をして、そこでの消費者被害に10万円までの保障を行うそうだ。
nikkei:ネット通販の損害、10万円まで補償 グーグルが新サービス
この画面はUnited Arrowsショップで認定ショップマークにマウスを乗せると現れる評価報告書である。
現在のところは、日本の一部の店舗について実験的に実施しているようで、あらゆるECサイトが利用できるようになるにはまだ待たなければならない。Googleのサイトで利用できるようになったら知らせてくれと申し込んでおくことも可能だ。
こうした仕組み自体は、目新しいものではない。マークシステムによりECサイトの信用性を高めよう、あるいは担保しようという試みは、日本の通信販売協会オンラインマークがその典型だ。
これは2000年5月に (社)日本通信販売協会と日本商工会議所(全国各地の商工会議所)が運営を開始しているが、残念ながら「事業者が販売する商品・サービス等の品質や内容、消費者と事業者の売買契約内容、事業者の経営内容を保証するものではない」とされている。
TradeSafeトラストマークというのもある。
こちらにはTradeSafeあんしんサポートというものがあるとされており、「トレードセーフとADR実施機関である「一般社団法人ECネッ トワーク(包括提携先)」が中間に立って双方の事情を聴取し、客観的な解決策を提示することで解決へのサポートを行う「TradeSafe ADRサービス」と、規定の要件により消費者様に10万円までの見舞金をお支払する「TradeSafeあんしん補償サービス」があります。」と記載されている。(実施例はあるのだろうか?)
(以上のマークはいずれも参考のためにコピーして貼り付けたもので、このサイトの信用性を表すものではない。)
またTradeSafeが加盟していると書いているWTA(World Trustmark Alliance)は、この種のマークシステムの国際協力組織で、アメリカのTRUSTeが加盟している。
で、こうしたマークシステムの基本的な仕組みは、各ショップの信用性を評価し、格付けをするとともに、その格付けに何らかの紛争処理システムを結びつけるというものである。
信用性を表示するだけで、紛争となった場合のお世話を全くしないというのでは、信じるのも信じないのも勝手だが、信じて損しても知らないよということになる。
何らかの紛争処理システムとは、苦情処理、メディエーションのような交渉仲介システムであり、これは例えばeBayが採用したことがあり、いわゆるODR(Online Dispute Resolution)の発展のきっかけとなった。
もう一つのタイプは補償システムであり、例えばYahoo!Auctonでは詐欺被害を受けた利用者に一定額の補償を提供している。ヤフオクの場合は、マークシステムを取っていないが、これは理論上ヤフオクの出品者全員にマークを付与しているようなものだからである。
上記の日本の例でいうと、オンラインマークは紛争処理システムを全く備えていないものであり、他方トラストマークはADRと一定額の補償とを備えた紛争処理システムが備わっているものである。
今回のGoogleのシステムは、マークシステム+補償というものであり、ショップの信用性評価が厳しいものになるとともに、どのような場合に、どこまで、補償がされるのかという点もキーポイントである。
ショップの信用性評価は、グーグル的にはできればCGMというか、取引履歴の評価システムを全面的に取り入れて人出をかけないで実施したいところであろうが、UnitedARROWSのようなビッグネームならともかく、そうでないピンからキリまでのECショップに広げていくとなると、それで採算が合うのか、どれくらいの参加料をショップから徴収しなければならないのか、見極めていかなければならないところであろう。
そういうわけで、実験的に、グーグルにしては珍しく慎重に始めたという印象である。
なお、こうした仕組みはもう保険、損害保険に限りなく近づいているといえる。法的には保険法の適用如何という話になるが、それ以前に、損害保険会社は自らの得意分野に侵食され始めていると考えるべきではなかろうか?
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