Book:ビジネスマンが大学教授、客員教授になる方法
1勝100敗! あるキャリア官僚の転職記 大学教授公募の裏側 (光文社新書)の著者である中野雅至氏の本である。
若手官僚から大学に就職した経歴を持つ著者が、その経験を踏まえてビジネスマン向けに大学教授に転身するノウハウを説いた書。
掛け値なしにビジネスマン向けであって院生の皆さんの参考にはほとんどならない。その点では昔の鷲田小弥太先生の大学教授になる方法 (PHP文庫)という本の方がまだマシだった。
この本のノウハウは、乱暴にまとめると、学術論文を書き、然るべき媒体に発表し、学会発表も行い、できれば博士号をとるなど努力することと、公募でも一度に多くの先生を確保しなければならない新設校・新設学部等が狙い目だということだ。
詳しくは本を見て欲しいが、それ自体は正しい。論文の書き方のところはちょっとどうかと思うが、総じて参考にはなるのだろう。
しかしこの本を読んでいると、やはりなんのために大学教授になりたいかが不明で、そこがないのにノウハウだけ追いかけているから、どうしても軽さを感じてしまう。
大学教授とは何か、基本的には研究者であり、研究したことをベースとして学生の教育を行う人だ。研究内容がそのまま教育内容になる幸せなケースもあれば、研究と教育とが必ずしも一致しないケースもあるが、各自が各自の興味関心に従って調査し、究明したところを発表し、これをベースにした教育を行うことをやりたいという欲求があってはじめて、大学教授になりたいという進路希望が出て来る(正直言って教育をしたいという欲求はマストではないかもしれない)。
この欲求が先にあれば、学術論文を書くことが就職に必要だとか書く必要もないのである。それこそがやりたいことであり、言われるまでもないはずだ。
単に名誉が欲しいなら、この本でもハードルが低いとされている客員教授辺り、あるいは非常勤講師辺りで十分だろうから、書きたくもない論文を書く必要はあまりない。ま、チャンスを広げるという点では
安定した職業としてであれば、正直オススメではない。安定という点では公務員に、収入という点では民間企業に、確実に負ける。定職でありながらフリーターに近い境遇でいられるという点はメリットだが、フリーターだと思ってサボっているとなかなかつらい境遇に陥ったりする。
やはり何らかのテーマを研究し、成果を公表し、議論の渦中に入り、その中で生きることにこの上ない喜びを感じ、学生教育も少なくとも嫌じゃないという人がつくべき職業が大学教授である。
ビジネスマンでもそうした欲求を持つ人には、学術論文を書き、学会で発表し、と言った事柄は手段ではなく目標だ。
そこまでもノウハウとしてしまうあたりに、どうにも不信感を感じてしまうのだ。
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