arret:死刑確定者=再審請求準備者と弁護人の秘密交通権
最高裁が刑事手続上の人権保護を正面から認めた例として注目できる。
死刑囚の面会に刑務職員を立ち会わせるかどうかについては、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条に規定がある。
(面会の立会い等)
第百二十一条 刑事施設の長は、その指名する職員に、死刑確定者の面会に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のためその立会い又は録音若しくは録画をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときは、この限りでない。
そして本件死刑囚とその再審請求のために選任された弁護人2名とが秘密面会を申し出たにも関わらず、刑務所長はこれを認めなかった。この点が上記法律121条但書きの裁量権を逸脱しているかどうかが問題となった。
この点についての最高裁の論理は以下の通り。
(1) 死刑確定者が再審請求をするためには,再審請求弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障する必要があり、再審請求前の打合せの段階でも、死刑確定者が再審請求弁護人と秘密面会をする利益は上記法条ただし書にいう「正当な利益」に該当する。
(2) 弁護人の方も、刑訴法39条に基く固有の権利として秘密交通権があり、これは刑訴法440条で選任が認められる再審請求弁護人の関係でも固有の利益である。
(3) 従って刑務所長は、規律・秩序維持と並んで、両者の秘密面会の利益をも十分尊重しなければならない。
かくして、以下のように判示した。
死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく,再審請求弁護人の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。
重要であり、また高く評価できる判決である。
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