arret:国立大学法人に対する文書提出命令
国立大学法人は、いわゆる独立行政法人だが、その職員は国家公務員ではない。
ところで民訴法220条4号ニの自己専用文書は、そのさらなる除外事由としてカッコ書きを定め、以下のように規定している。
(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
自己専用文書だということになると、裁判に提出する義務を免れるが、さらに公務員が組織的に使用する文書は除くということで、結局提出義務があることになる。
この規定は、あの菅直人が厚労大臣だった時に、薬害エイズの危険性を十分認識してきたことを示す資料が厚労省内のロッカーに隠されていて、それを出そうとしなかったことがバレて、官僚が情報隠しをすることが批判されていた時期だったことを背景に、数年かけて見直されて挿入されたものである。つまり公務員が組織的に利用するための文書は、外部に出さないつもりでも裁判では出せ、というわけである。
そこで、国家公務員ではない国立大学法人の職員は、自己専用文書だということで提出義務を免れるのであろうかということが問題となった。
これによれば、最高裁も原審も、自己専用文書だという主張を退けている。
国立大学法人が所持し,その役員又は職員が組織的に用いる文書についての文書提出命令の申立てには,民訴法220条4号ニ括弧書部分が類推適用されると解するのが相当である。
誠に妥当な判断というべきである。
なお、後段で本件文書が公務秘密に属するかどうかについての判断も加え、公務秘密文書には当たらないとした原決定を支持しているが、本件文書が何なのかが記載されていないので、その当否はなんとも言い難い。が、前半で公務員に関するカッコ書きを類推適用すると判断したのと平仄を合わせて、公務秘密文書に関する規定の適用を国立大学法人に認めたところは妥当である。
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