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2013/11/12

news:自動運転車が事故を起こしたら?

グーグルが世界的に煽っているせいか、自動運転車がもてはやされているが、自動運転中に事故を起こしたら法的責任はどうなるという疑問は誰しも抱いているだろう。

そんなおり、自動運転よりは単純だが、共通する問題を提示する衝突回避システムにおいて、自動で止まるはずが止まらなかったという事故が現実のものとなった。

毎日jp:衝突回避乗用車:試乗会でフェンス衝突 運転手ら2人けが

事故があったのは10日午後0時40分ごろ。試乗会は坂田自動車工業の主催で、約7メートル先につり下げたウレタンマット(縦60センチ、横98センチ)に向かってマツダ社製のスポーツタイプ多目的車「CX−5」を走らせ、自動ブレーキを体験させていた。事故前に3、4人が試乗した際は不具合はなかったが、事故時にはマットにぶつかり、さらに前方のフェンスに衝突したという。

試乗会で、しかも助手席にはメーカーの販社社員が同乗していたというのだから、これは運転の仕方が悪かったのではなく、そもそもシステムがおかしいのではないかと推測したくなるが、運転者が指示に従わずに限界に挑戦したという可能性は残されている。
ちなみに、「このシステムは「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」。時速4〜30キロで走行している場合、前方の車に接近すると自動的に減速。衝突の危険を感知した場合に急ブレーキがかかり、30キロを超えると作動しない。」ということである。

これはテレビで喧伝しているような、運転を一部にせよおまかせするようなシステムではなく、うっかりミスをカバーするというレベル、あるいはABSと同程度の運転サポートなのかもしれない。だとすれば、そのシステムがあるからといって人間が手を抜いてよいこともなく、事故時の運行供用者責任には影響がないのが普通だろう。
もちろん、正常に走行しているのに突然急ブレーキがかかって追突事故を招いたというようなことがあれば別論だ。

これに対して運転をおまかせするタイプの自動運転車が事故を起こした場合、システムに欠陥があった場合は別として、期待通りの自動運転をしていながら人身事故がおこれば、運行供用者責任の成立は微妙なものとなる。

自賠法第三条  自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自動運転による制御が正常に機能していたにもかかわらず、よけきれない人身事故が起こってしまった場合、そもそもそのようなよけきれない場合があるのだから自動運転に依存すること自体が過失だと評価される可能性はあろう。状況に応じて、適切に手動運転に切り替えるなどして安全を確保すべき義務があったというわけである。
しかし、そもそも頼るべきではなかったと評価されるようなら、自動運転車は実用化されているとは言えない。
運行供用者責任の高いレベルの責任範囲は、自動運転車の実用化にも極めて高いレベルのハードルとなりそうである。

それにもまして、刑事責任の方はどうなるのか、さらに気になる。最近改正されたものには追い付いていないのだが、重罰化以前の問題として、刑事上の過失責任は自賠法の責任よりも軽いはずだ。しかしそれでも、改正前の自動車運転過失致死傷の要件は「自動車の運転上必要な注意を怠り」というものだ。
この必要な注意というのが、「正常に機能していたにもかかわらず事故を避けきれなかった」ような自動運転車に頼っていたこと自体が違反しているということになれば、やはり自動運転車の実用化のハードルは極めて高いものとなりそうである。

訂正:血管を欠陥に改めました。ゆうすけさん、ありがとう。

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コメント

これに対して運転をおまかせするタイプの自動運転車が事故を起こした場合、システムに血管があった場合は別として、

誤植報告です。

誤…血管
正…欠陥

投稿: ゆうすけ | 2013/11/12 09:42

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