law:競売が暴力団のシノギとなっている件
毎日新聞:<暴力団>競売で組事務所確保…暴排機運の中、法の網くぐり
中部弁護士会連合会が調査したところによると、「東海・北陸6県の暴力団事務所の約1割が、裁判所による不動産競売で取得されていた」とのことである。
暴力団排除条例の中で、不動産を譲渡する場合には相手方が暴力団事務所として使用するものでないことを確認し、もし暴力団事務所として使用するなら契約を解除する旨の条項を入れるよう努めることとされている。
例えば東京都暴力団排除条例では19条に規定がある。
しかし、裁判所の強制競売や任意競売の場合には、そうした暴力団排除の仕組みがなく、暴力団関係者が入札に参加することも妨げないし、暴力団事務所として使用される目的が明らかでも排除はできない。
それゆえ野放しだというのが上記記事の趣旨だ。
考えてみれば、民事執行法というのは制定当初から、暴力団の排除を目的として様々な規定を作ってきたはずである。昭和54年制定前の強制執行法は、権利関係がただでさえ複雑で見通しにくい不動産競売物件に、その筋の人やプロでなければ参入することが困難で、競売場でも威迫行為が横行していた。そうした状況を改善するために、手続や資料の透明性を高めるなどの工夫がされた。
さらにバブル崩壊後の不動産競売活況の中では、売りやすくするために様々な工夫がされ、特に実力を持って執行妨害する連中には刑事的にも強制執行妨害罪の積極適用を進め、手続法的にも占有屋や抗告屋が跋扈する手段となる規定をなくしていったり、相手方を特定しない保全処分を出せるようにしたりしてきた。
こうした手続の改善は、暴力団排除を目指したものといってもよいのだが、世の中はもっと先を行っていたというわけである。
入札資格として、暴力団関係者の関与を欠格事由とすると、今度はそれを証明する資料提出が必要となり、円滑な売却が損なわれるのではないかとか、そもそもただでさえワケあり物件で落札してからどんなトラブルが待ち受けているかわからないような競売に敢えて介入するのは暴力団関係者くらいしかいないから、その彼らを排除したら入札者がいなくなるとか、そんな危惧は表立って言うことはできないであろうし、暴排条例程度の措置の導入はやむを得ないのではなかろうか。
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