arret:ドメイン名使用差止請求権不存在確認の利益が否定された事例
先のサイバー判例回顧で紹介した事例の控訴審判決がでた。
citibank.jpというドメイン名について、日本知的財産仲裁センターの移転裁定が出たので、登録者が申立人に対してドメイン名使用差止請求権不存在確認の訴えを提起したところ、そのような訴えには確認の利益がないとして却下されたというものである。
要は、本件移転裁定の当否を決する訴えでなければ確認の利益がないということで、それ自体は正当である。
しかし、移転裁定が認められるのはドメイン名使用差止請求権が実体法上認められる場合には限られないのであるから、確認の対象はむしろ自己のドメイン名使用権の方が適切だという点は、よく考えてみると、疑問がないわけではない。
法的な差止請求権(本件では商標法のみが挙げられているようだが、不競法に基づくものも対象となりうる)が成立しないところで、移転または取消裁定が可能になるということであれば、そのズレには何らかの説明が必要になるからである。
ドメイン名登録利用ルールは、国境にかかわらないので、jpドメインに限っても日本法の解釈とは一致する必要がないということであれば、それはそれで注目に値するルール形成となるが、果たしてそういえるのか、ちゃんと考えてみる必要がある。
なお、却下判決が確定した場合に、出訴はなかったことになるのであろうか? それとも却下判決が確定した時点からさらに10日間、再度の出訴をすれば裁定実施を妨げることができるだろうか?
これはJPRSのルール解釈ということになるが、微妙な所であろう。
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