民法750条違憲訴訟が棄却
民法750条の規定が間接差別にあたるとして、立法の不作為による国家賠償責任を問う訴訟が、ひっそりと請求棄却されていた。
YAHOO!経由
民法750条の憲法判断せず――別姓訴訟請求を棄却
週刊金曜日 7月4日(木)17時8分配信
あの、投資勧誘オール・インに賠償命令 1億6千万円、東京地裁という判決と同一日に同一の部が下した判決で、オール・インの方はすぐに報じられたのに、上記は時間がたってようやく、それも週刊金曜日に出たという。ボ2ネタにもまだ載っていない。
民法750条は以下の様な規定である。
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
一見、男女に区別のないこの規定は、しかしながら現実にはほとんどの女性が結婚時に姓を変える結果となっており、それが当たり前という意識が蔓延しているため、そうしたくない女性に対する圧力となっている。
このように直接の差別ではないものの、間接的には差別となって働いている法制度は、女子差別撤廃条約の以下の規定から、問題があると言わざるをえない。
16条1項
締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。(a)婚姻をする同一の権利
(b)自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利
---中略---(g)夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)
そしてこの条項に照らし、日本の法状況に対する女子差別撤廃委員会が以下のように懸念を表明している。
17.委員会は,前回の最終見解における勧告にもかかわらず,民法における婚姻適齢,離婚後の女性の再婚禁止期間,及び夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する。
このような状況下で出された5月29日の東京地裁判決は、上記記事によれば、次のようなものだった。
石栗正子裁判長は原告側請求を棄却。「婚姻当事者の双方が婚姻前の氏を称することができる権利が憲法一三条で保障されている権利に含まれることが明白であるということはできない」「民法七五〇条が憲法に反するものであるとしても(略)直ちに国会議員の立法不作為が(略)違法の評価を受けるものではない」とし、明確に合憲か違憲かの判断をしなかった。
なかなか微妙であり、判決文を見てみないと確かなコメントはしにくいが、750条を残していることの違法性は認められなかったということである。
政治の季節でもあるので、本来なら選挙を通じて実現すべき課題なのだが、また自民党は夫婦別姓選択制にはことのほか冷たい態度であるため、全く期待はできない。
結局、司法を通じた抵抗や国際社会を通じた圧力に頼るしかなさそうである。
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