民法教材向けNews
消費者法というよりも、民法入門のレベルだが、なかなか悩ましい要素を含んでいる。
今年4月には、女性客に4年半で約1100万円分の婦人服を売った東京都内の百貨店に対し、東京地裁が、一部は認知症発症後の売買契約だったと認めて購入代金約240万円の返金を命じた。 (中略) 訴えていたのは世田谷区の独り暮らしの女性(78)。渋谷区の東急百貨店東横店のブティックで、2006年からの4年半に280点の婦人服を買っていた。離れて暮らす弟(70)によると、10年6月、身内の葬儀に参列した女性の上着とスカートの組み合わせがちぐはぐなことに気づき、自宅を訪ねると、「未開封のブラウスやジャケットが部屋中にあふれていた。ぞっとする光景だった」という。
同年8月に出た病院の診断は「アルツハイマー型認知症で、発症から5年ほど経過」。弟は同百貨店に事情を説明して商品を売らないよう頼んだが、同店は女性への販売を続けた。弟は11年5月からは女性の成年後見人になり、12年2月、約1100万円の返金を求めて東京地裁に提訴した。
2006年 問題となった280点1100万円分の買い物の始まり
2010年6月 弟が異常に気づく
2010年8月 アルツハイマー型認知症と診断。2005年から発症と認定
弟が百貨店に商品を売らないよう依頼するも、販売は続く。
2011年5月 弟が成年後見人に就任
2012年2月 本件訴え提起
2013年6月 240万円分の返金を命じる判決言渡し
この記事では、判決が返金を命じた240万円分の買い物が、いつからいつまでのものなのか明らかではないが、問題の買い物自体が2006年から4年半ということなので、2011年5月の成年後見開始より前の段階の買い物について、返金が命じられたのであろう。
記事からははっきりしないが、おそらくは2010年8月に診断が出て、弟が販売するなと通告した時点前後から後の買い物ではないかと推測される。
法学部1年生の民法を学んでいる学生たちは、成年後見の意味とともに、その開始前に契約が無効となって返金が命じられるのはなぜかを勉強してほしい。
それとともに、ルールとしては成年後見開始前であっても契約無効があり得るのだが、子供の場合と異なり、認知症患者の場合には一見して明らかに売ってはいけない人ということは分からないわけである。
そこで、売主側はどうすればよかったのか、どうすべきだったのか、どうすることができたのか、記事に現れた事情に想像を加えて、行為基準がどうあるべきか考えてみよう。
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