Lawschoolの不都合な真実
目を覆わんばかりだが、いくら目を覆っても見えてくるのが、ロースクール制度の行き詰まり感だ。
今日のニュースから二つ。
共同通信より
今春、学生を募集した法科大学院69校のうち、93%に当たる64校で入学者が定員を下回ったことが8日、文部科学省の集計で分かった。昨年度の86%(73校のうち63校)よりも悪化した。入学者数の合計は2698人で過去最低を更新し、ピークだった2006年度の半数以下。23校は入学者数が10人未満となり、法科大学院の運営や教育の質の確保が困難になっている。
同じテーマについて日経新聞がより詳しく報じている。
ネタ元は、中教審法科大学院特別委員会の5月8日の会議資料で、いずれ公開されるであろう。
入学者数が定員の半数に満たなかったのは40校。23校は入学者数が10人未満となり、特に新司法試験合格率が低迷する学校は前年度からの落ち込みが大きかった。定員に占める入学者数の割合(充足率)が最も低いのは大阪学院大で7%。次いで久留米大と島根大が10%、東海大と東北学院大が13%、駒沢大が19%と続いた。
国立で5割を下回ったのは島根大のほか、新潟大(25%)、鹿児島大(27%)、香川大(30%)、静岡大(40%)、熊本大(41%)、東北大(44%)。
入り口での低迷ぶりは、出口での低迷、すなわち司法試験合格率に影響を受けていることは間違いないと思われるが、更にその先の、弁護士職につくことの経済的不安定性にもまた大きく影響を受けているのであろう。
その一つは、司法修習期間中の給与が廃止され、その間の費用を貸与することができるとした、いわゆる貸与制の導入であり、もう一つは弁護士への就職困難、即独やノキ弁を余儀なくされる状況にある。
もう一つのニュースは、その弁護士の経済状態に関するものだ。
弁護士収入:2割が年収100万円以下(毎日新聞)
国税庁の統計によると、このうち08年は、100万円以下が2879人(全体の約12%)、100万円超500万円以下が4684人(同20%)だった。しかし、09年は、100万円以下が5189人(同20%)と急増。11年は、100万円以下6009人(同22%)、100万円超500万円以下5208人(同19%)だった。一方、1000万円を超える高収入の弁護士の割合は年々減っているが、11年でも約34%に上る。
要するに、二極化の状況が鮮明になってきているというのである。
もちろん個人事業主たる弁護士の、売上から必要経費を除いた額であるから、捕捉率の問題もあるだろうし、どこまでを必要経費とするかという問題もあろう。しかし何れにしてもかつての弁護士=金持ちというイメージとは裏腹のイメージが醸成されており、そのことが法曹への志望者を減少させていることは間違いない。
これから法科大学院に入って司法修習を経て弁護士になろうという時に、数年分の学費と生活費を投入してもよいという決断をさせるには、それがペイするからということは必須で、上記のような状況では、そもそもペイしない職種というイメージに繋がり志望者を遠ざけているからである。
これに対して、金持ちになりたくて弁護士になろうとする連中よりは、弁護士職の価値に惹かれて弁護士を志す人がいれば、それでよいのだから問題はないという人達がいる。
しかし、優秀な人材を集めたいと思えば待遇を良くするというのが常識だ。経済合理性を全く無視して精神的価値を強調しても、あまり通用するものではない。
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