« France:同性婚合法化法案に憲法院が合憲判断 | トップページ | Yahoo!IDが流出・・・、私も対象だった。 »

2013/05/18

law:民事訴訟法学会初日に本人訴訟の実証的研究を聴く

初日は、個別報告である。
個別報告は4本とも個性豊かなものだったが、先日来Twitterで噂の本人訴訟の実証的研究が、調査をした裁判官自身によって報告された。

従前、本人訴訟について言われていたことが実証的にも裏付けられたというところだ。

すなわち、本人訴訟を選ぶのは費用対効果を考えてのことであること、本人訴訟の当事者が弁護士代理人をつけた相手に勝訴することも一定数は存在すること。
ただし、一定数は存在しても、裁判官から見て弁護士を代理人につけるように勧告することもよくあり、かつ、弁護士代理人をつけたならば結果が変わっていただろうという事件もかなりある。

本人訴訟は、なんといっても手続に慣れていない当事者本人に手続や主張立証を教示しなければならず、それによって妥当な結論が出るように裁判官は腐心している。しかし、このことはお金を払って弁護士を代理人につけた当事者にとっては、不公平なことと思われる。

適正な解決のための積極的釈明もかなりの程度行われているが、あまり積極的釈明をして弁護士代理の当事者に不公平感を持たれてもいけない。そこで手控えるということもある。それが、弁護士を選任していたら結果が変わっただろうと思われる事案というわけだ。

民事訴訟法には、弁論能力がない当事者に対し、弁護士の付き添い命令を出すことができて、付き添い命令が出れば弁護士を選任しないとならない。その弁護士費用は訴訟費用となり、敗訴者負担となる。
これをもっと活用すればよいのではないかというのが会場から、佐藤鉄男先生が指摘されたことだが、なぜか付き添い命令は活用されていないそうである。

なぜ活用されないか?
思うに、付き添い命令を出しても、その当事者が適当な弁護士にアクセスできるとは限らず、アクセスできても弁護士に不信感を抱いている場合もあり、結局問題解決にはつながらないのではないか?
例えば、弁護士会と常時連絡があり、付き添い命令と同時に代理人候補者リストを提示するとか、弁護士会の窓口を紹介するとかという工夫により、弁護士にアクセスする可能性が高まるのではなかろうか。

そのほか、任意的当事者変更についての報告では、プロバイダ責任制限法が引用されていた。例えばプロバイダに対する発信者開示請求で、訴訟中に開示されたら、発信者への訴えに変更するということを考えているのだろうか? 興味深い話である。

|

« France:同性婚合法化法案に憲法院が合憲判断 | トップページ | Yahoo!IDが流出・・・、私も対象だった。 »

学問・資格」カテゴリの記事

コメント

やってみりゃわかるぜい。
やってみな御大。

投稿: ばんぶう | 2013/05/19 00:01

付添命令をだされた経験はないです。
付添命令をだした段階で、本人訴訟側敗訴の心証を明らかにしたうえ是正したいと裁判官がいっているように代理人訴訟側からはみえてしまいます。公平性を依頼者が問題視したら弁護士としては忌避はしないにせよ。三庁協議会にだすとか裁判官再任のときの否定的資料としてだすとかせざるをえないこともあります。

投稿: 岡本 哲 | 2013/05/19 06:22

そういうご意見を見ると、やはりこの問題は弁護士からの見方と裁判所の側の見方とが全然違うし、それぞれの利害を下にした評価になるのがよく分かりました。

投稿: 町村 | 2013/05/19 09:07

あと国賠も意識する。個別裁判官、合議体、書記官、事務官。
レクターみたいのわんさよ。
御大だから登録せえって(笑)
ウイキに書かれるくらい名刺なんやから。

投稿: ぶう | 2013/05/20 02:49

付添命令は、当事者が必要な陳述ができないために陳述を禁止されるということが前提ですが、陳述を禁止するまでの事案というのはそれほどないので、なかなか出しがたいかと(私の経験でも、陳述禁止は同じことの釈明を再三求めても答えなかった1件しかしたことがありません。)。
加えて、付添命令を出しても、代理人を選任するか否かは当事者の選択にかかってしまう上に、ひとまずは着手金なり報酬なりを依頼者が出さなければ弁護士も受任しないでしょうから、実際に選任されるかというと期待薄ではないかと思います。
なお、私の場合、代理人のついていない当事者に、手続の教示はしますが、主張立証は促したり教示したりはしません。代理人をつけないのだから、その点は自分でしなければならず、知識や技術がないことによって不利益が生じるかもしれないけれども、それは自身の選択であるから手助けはしないと最初に告げることにしています。

投稿: えだ | 2013/05/20 21:28

貴重な情報をありがとう御座います。
民事国選みたいな仕組みがないと、当事者の選択に委ねる、コストも当然かぶるという以上のことにはならないですね。ま、それでよいと割り切るかどうかですが。

投稿: 町村 | 2013/05/22 16:08

個人的には、民事の国選代理人+地裁以上の弁護士強制が望ましいとは思うのですが、敗訴者からの費用取立が大変でしょうなぁ。
回収できないとなると、結果として国庫負担となるわけで、それだけの予算をつける覚悟が立法者にあるかどうかということになるのでしょうか。

投稿: えだ | 2013/05/23 21:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: law:民事訴訟法学会初日に本人訴訟の実証的研究を聴く:

« France:同性婚合法化法案に憲法院が合憲判断 | トップページ | Yahoo!IDが流出・・・、私も対象だった。 »