barexam:今年の司法試験民訴論文
今年はちょっと別のところで民訴問題を扱うので、こちらで詳しい論評を書くのは控えているが、とりあえずどんな問題だったかだけでもメモしておこう。
民事系第三問は、2つの事例に4つの設問がある。いずれも典型論点というか、教科書等で取り上げられている代表的な問題であり、しかも通常は知識として記憶を要求されている代表判例が、抜粋して引用されているところが面白い。
もちろん(新)司法試験的には、最初からそういう問題もありというコンセプトであったし、これまでもそういう例はあったのだが、その傾向は依然として維持されている。
設問1は遺言無効確認の訴えが、確認の利益を欠くのではないかというもので、過去の法律関係の確認でも確認の利益があるとする最高裁判決を引用し、それは踏まえながら、事案の違いを考慮して、確認の利益なしとの立論をしろという問題だ。
実に良問である。
設問2は同様に遺言無効を理由に、既に移転登記された不動産の取戻し(抹消登記)を遺言執行者に求めたというもので、こちらは当事者適格が問題となる。やはり遺言執行者に当事者適格を認める最高裁判決文を引用し、にも関わらず当事者適格を否定する立論をせよという。
しかし、これはややトリッキーかもしれない。
設問3は事例が代わり、所有権の取得経過と要件事実構成、そして弁論主義の適用ないし釈明権の行使の問題であろうか。やや出題意図が分かりにくいところがある。
設問4は、設問3を前提に、単独の所有権の確認を求めて敗訴した共同相続人の一人が、相続による共有持分権を主張して後訴を提起するのが既判力に触れるかという問題だ。最近話題の法的観点教示義務、あるいは信義則に基づく既判力の縮減という理論に基づく立論を求めており、そのヒントとして一部請求棄却後の残部請求が信義則により却下された裁判例を引用している。信義則による既判力の拡張を参考に、信義則による既判力の縮減を論ぜよというのであるから、それなりの思考力・応用力が試される。
これには多数意見として既判力の縮減を認めなかった最高裁判例があり、その反対意見に同様の論理展開が見られるが、問題と判例の事案とがやや異なるので、参考にはなるが知っていることは必須ではない。むしろ、その判決を記憶していて、その多数意見通りに書けば、確実に☓となる問題だ。
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