Book: アジアのインターネット
Internet en Asieと題する本は、Picquier PocheのL'Asie Imédiateというシリーズの新書サイズの一冊である。
アジアのインターネットとしてフランス人が興味を惹かれるのは、特に民主化とインターネットの関係や、アジア的文化の中での自由なネットワークがどういう姿を見せるかである。
例えば、中国にインターネットが普及することで、中国政府がどのように振舞っているか、その意図にもかかわらずインターネットを経済発展の道具として使わざるを得ず、それに伴いインターネットによる意見表明の機会や情報収集の機会が民衆に広がることで、民主化が進むかどうか、楽観的ではないにしても、変化がないはずがないということである。
インターネットの言論状況では、日本における2ちゃんねる文化、あるいは韓国におけるOh My Newsによるメディアの変革などが注目の的となっている。
特にOh My Newsについては、欧米においても旧来のメディアがインターネットによって大きな変革を迫られ、場合によってはオルタナティブに可能性を開いている状況が有り、この点からアジアにおいても韓国のOh My Newsが注目の的となるのである。
日本については、Karyn Poupéeという人が書いているが、ワープロやポケベルの時代からの情報ネットワーク状況を紹介し、1999年のiモード登場、2001年のYahoo! BBによる無料モデム配布などのエポックメイキングな出来事を追って現在までの歩みを叙述している。
全体として正確な描写だが、現在でもなおMixiが日本で一番人気だとされているところは疑問である。データが古いのか、依拠した意見が現実にキャッチアップ出来てないのか、FaceBookなどが実名主義で日本人に受け入れられないという、ちょっと前の分析がなされている。
2ちゃんねるについても、最近の麻薬売買幇助事件までも取り上げられているが、依然として日本のインターネットシーンの中心にあると言わんばかりの扱いには疑問がある。
動画共有についてはニコニコ動画が取り上げられており、事業仕分けがネット中継されたことも興味深いようだ。
福島第1原発の以降のメディア・政府不信とインターネット情報への、やや過剰な信頼などにも目配りし、現代日本の状況分析として参考になる。
他のアジア諸国、中国、インド、韓国についても読んでみようと思わせる一冊であった。
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