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2013/03/27

シンポジウムe-reputation とデジタル履歴

3月21日と22日に開催されたシンポジウムが、無事、全日程を終えて成功裏に幕を閉じた。

一日目は自分の報告があるため他の報告を聞いて考える心の余裕がなかったが、二日目は解放された気分で楽しめた。
Toulouse102


私の出た分科会はSalle de Thèseといい、博士論文審査の部屋ということである。まるで法廷のように審査官が座るひな壇があり、右手前に発表席がある。プロジェクタのスクリーンは発表者側の壁にしつらえてあり、傍聴席からはよく見えない。

ここで行われた報告は、まず第一に、スマートフォンの位置情報がネット上に公開され、写真に位置情報が付加されて共有されているという事実を人々が認識しているか、そのリスクも了解しているのかどうか、アンケート調査に基づいて問題状況を明らかにするというものであった。
続いて、Wikiによる共同作業を自然科学分野で行なっていることの紹介と意義について報告があった。Wikiシステムを使うということで、もちろんWikipediaもその最大のプロジェクトだが、それには限られず、非公開グループでWikiシステムを用いたプロジェクトも対象にしている。
そのメリットはなんといってもアクセスの容易さ、みんなが研究プロジェクトに関与できること、多くの研究者の叡智がWikiシステムにより集まることができるという点にある。今回のシンポのように一箇所に集まって議論する必要がないというわけである。
ただしデメリットとしては、参加者の質が必ずしも明らかでなく、そもそも参加者が特定できない場合もあり、研究の進行がコントロールしにくいところがあげられる。
 もっとも、これらのメリットデメリットは、Wikipediaのような無制限公開で有名なプロジェクトと非公開ないし公開でも無名のプロジェクトとでは大きく異なることだろう。
 思うに、メリットとしてスケーラビリティを追求するのであれば、公開し、参加者を制限しないシステムを取らざるを得ず、Wikipediaほど有名ではないにしても、それなりに注目を集める必要がある。その前提であれば、どうしても上記のデメリットは生じてくるだろう。ここには確かにジレンマがある。
 この報告には質疑がたいそう盛り上がったのだが、みんなの関心は、公開Wikiによる共同作業の成果が誰に帰属し、参加者の業績評価がどのようにして、あるいは何を基準にしてなされるかということだった。研究者の集まりだけに、研究業績評価がきちんとなされるのかどうかは極めて重大な関心事だし、報告者はその点についてアクセス数による評価ができるという以上の答えはないようだったので、紛糾もした。
 先の報告者が、インターネットの世界の評価は独特であってもよくて、将来はそれが支配的になるかもしれないというとりなすような発言をして話が終わった。聴衆不満顔であった。
 三番目の発表者は、SNSによる人々の意見の集合的分析に関するものであった。
 社会学的な分析結果の報告で、ウェブ上の見解のもつ影響力分析ということだから、このシンポのテーマにズバリ答えるものだが、残念ながらよく聞き取れず、プレゼン画面もよく見えないので内容はほとんどわからなかった。
 質疑では、影響力評価が妥当性をもつ範囲についてや、企業のマーケティングへの応用が可能かなどがあったが、あまりはっきりとは答えられていなかった。

 休憩後、忘れられる権利 droit à oublir について二つの報告と、ウェブ上の書き込みの影響力評価についての報告があった。
 特に忘れられる権利については関心も高く、しかし具体的な内容については固まっていないので、どのように内容が考えられるかというところから議論がなされている。少なくとも一定のデータについて消去を求める権利とすることが中心になるのだが、当然ながら他の利益との調整が必要となる。犯罪捜査や国防などの分野ではほとんど異論なく消去させる権利の限界が認められるが、表現の自由とのバランスは困難な課題だ。
 日本でも、忘れられる権利というわけではないが、プライバシーないし名誉を侵害する情報の暴露に対して削除を求める権利と表現の自由とが衝突する場面が問題となる。これを想起しながら聞いていると問題状況は理解できる。
 その上、報告では従来の欧州人権裁判所や欧州司法裁判所の判例との関係で、忘れられる権利が利益対立を抱え込むだろうという指摘があり、説得的であった。

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