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2013/01/10

個人情報保護なのかprivacy保護なのか

個人情報が大事だ、守らなくては、という話はもう世間一般に広く流布されている。
その状況は、だいぶ前から無かったわけではないが、なんといっても個人情報保護法の制定によるところが大きいだろう。

しかし、個人情報保護法は、そのほとんどの規定が「個人情報取扱事業者」に対する行政規制であり、しかも個人情報取扱事業者とは5000件もの個人のデータをデータベースで管理しているものをいうのだから、一般の個人や地域の小グループなどはほとんど対象とはならない。

もっとも個人情報保護法3条は以下のように定めている。

(基本理念) 第三条  個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない。

この名宛人は特に個人情報取扱事業者とは限られておらず、また個人情報取扱事業者の取扱いに係る個人情報という限定もないので、私達個人も含めた一般に適用があるのだ。とはいえ何の効果もない精神的な訓示規定ではあるが。

では世間では全く誤解しているのかというと、さにあらず、プライバシーという個人情報とは似て非なるものを個人情報として、守らなくてはならないということを言っているのであろう。

さて、そんな個人情報なのかプライバシーなのかよく分からないまま、とにかく大事だから守らねば、というレベルの啓発をしているサイトがある。

子どもたちと学ぶ著作権、肖像権、個人情報保護
 このサイトはNPO法人eラーニング教育開発センターというところが独立行政法人国立青少年教育振興機構の子どもゆめ基金というのの助成を受けて作成されたもので、動画とクイズ中心の教材であり、非営利目的ならコピーも自由となっている。

 このサイトの動画を見ると、もう個人情報という名のプライバシー保護が満載で、特になるべく〜という表現が非常に多い。つまり法的な解釈を示しているのではなく、法的なトラブルを可能な限り避けようというスタンスでのアドバイスをしているのだ。
 もともとプライバシーというのは、絶対的な基準で守られる権利ではない。例えば犯罪を犯せばもちろんだが、犯罪の嫌疑が掛けられ逮捕されただけで、その被疑者のプライバシーはズタズタになる。犯罪を犯したのなら自業自得かも知れないが、犯罪の嫌疑が掛けられるかどうかは本人が左右できるとは限らない。
 犯罪だけではない。他人の権利と自分のプライバシーとが衝突する場合には、その調整が必要となる。その場合に常にプライバシーが勝つわけではないのだ。

 どうもそのあたりを誤解して、プライバシーは何にも優先して守られるべき権利利益であるかのような風潮があるし、上記サイトで解説をしている弁護士の口吻にもそんな雰囲気が感じられる。

 他方で、ポイント・カードにおける利用履歴の収集分析再利用とか、ネット利用における履歴の収集分析再利用とか、さらにはビッグデータという名で収集されているネット上の情報流通の記録とか、商業的なメリットを追及するためならプライバシーや(本来の意味での)個人情報の保護を蔑ろにしてもよいという風潮が同時進行している感がある。
 形式的かつ包括的な同意の調達をもって、情報主体の想像を超えた範囲での情報を収集し再利用することが際限なく続けられた時、その集積されたデータが悪用され始めたら取り返しのつかないことにもなりかねない。情報流失は絶対にないと断言できる企業などは存在しないだろうし、将来にわたっての安全性を保障できるはずもないのである。

 そういうわけで、プライバシーや個人情報保護の問題を考える必要に迫られてあれこれ思うと、一方では過剰なまでも神経質な「個人情報」権利意識と、他方では無防備すぎる「個人情報」ダダ漏れ容認との、極めてアンビバレンツな状況に引き裂かれていると感じるのだ。

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