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2013/01/09

consumer:団体訴訟による差止請求権の隘路

今年初めての人前でしゃべる仕事(除く授業)を終えた。
テーマは消費者団体訴訟の適用対象で、ホクネットの受付担当者研修というミニ研修である。

要するに、適格消費者団体による差止訴訟の対象となる事件はどんなものか、再度確認をしようということで、法律の規定とこれまでの適用例を大まかにおさらいするという内容だった。
ちなみにホクネットでは、このテーマでの電話相談をやっている。
Bn1225
これまでの適用例は、裁判例のみならず裁判上または裁判外の和解も含めて消費者庁のウェブサイトに報告が載っているのだが、その一つで団体訴訟の隘路となりそうなことを述べている裁判例があった。

京都地判平成24年1月17日WLJ(平22(ワ)4222号)

更新料条項の使用差止を求めたもので、問題となった条項は「月額賃料5万1000円,期間1年間の契約につき,その更新時には消費者が15万円の更新料を賃貸人に支払う旨の更新料条項」である。賃料の約3倍の更新料である。

この問題については最高裁が、更新料条項の原則有効を判示しており(→arret:更新料の特約が有効とされた事例)、そこでの「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない」との準則が当然前提とされている。

問題は、更新される期間等に照らし高額にすぎるかどうかの判断に際して、京都地裁は以下のように指摘している。

更新料の額が高額に過ぎるか否かの評価の根拠となる事情としては,主要なものでも,少なくとも賃貸借契約の目的物件の使用収益に対する適正対価の額や,約定賃料の額,さらに更新期間といった事情があり,これらを含め広範囲の事情を検討する必要があると考えられる。そして,これらの事情は,いずれも事業者と消費者との個別具体的な賃貸借契約における個別具体的な事情であり,しかも,仮に評価の根拠事情のうち一部について一定の前提を採用したとしても(例えば,更新期間及び約定賃料の額並びに更新料の額の比率について,更新期間1年間で,更新料の額が約定賃料月額の2倍以上との前提で検討するとしても),約定賃料の額が適正な使用収益の対価に比較して廉価に抑えられているなどの事情が認められれば,当該更新料条項に定める更新料の額が高額に過ぎるとの評価に至らない場合もありうると考えられる。
 このように,更新料の額が高額に過ぎるなどの特段の事情がありこれが法10条により無効と認めうるか否かは,専ら個別具体的な事情により決まるものであるといわざるを得ない。

要するに、金額と更新期間とで高額すぎるとの判断ができるかというと、「高額すぎる」と言うためにはさらに「専ら個別具体的な事情により決まる」のだから、その評価のための事情を特定しないと差止は出来ないというのである。

そして原告団体が「予備的に更新期間1年に対し更新料の額が月額賃料の2倍以上の更新料を支払う旨の条項の使用差止め」を求めたのに対しても、以下のように述べた。

更新期間1年に対する更新料の額が月額賃料の2倍の更新料を支払う旨の条項が個々の賃貸借に伴う個別具体的な事情を考慮することなく直ちに前記特段の事情に該当して法10条により無効となるとは認められないし,他の特段の事情の存在によりこれが無効となる場合があり得るとしても,このことを理由として,その条項の使用の全部の差止めを認めることはできない。また,裁判所において更新料の額が高額に過ぎるとの評価に至る根拠となる事情を特定してその一部を認容することができないことも,主位的請求の場合と同様である。

要するに、高額な更新料として最高裁の基準でも違法無効な条項と考えられる場合でも、単に金額と期間だけから抽象的に無効とはいえず、あくまで個別の消費者ごとの事情により、場合によっては無効となりうるというだけだから、そのような条項の使用を一般的に差し止めることは出来ないというわけである。

これでは、個別消費者の被害発生を防止するために、無効となりうる条項の一般的な差止請求権を敢えて認めた趣旨が没却されるであろう。

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