misc:締切の快楽とな
ANAの機内誌『翼の王国』11月号を読んでいたら、締切についてのエッセイに目を惹かれた。
手元に持って来なかったので、うろ覚えなのだが、東大の先生で建築家の書いたエッセイで締切が快楽だと書いてあった。
自虐ネタ?と思って読んだが、なかなかおもしろい。
建築でも、施主の依頼によるので、締切というものがある。ところが建築家にとっては、設計段階こそが最も楽しい時期なので、締切がないと、いつまでもそれに耽ってしまうが、締切があるおかげで、区切りのつかないものに区切りをつけて設計を形にすることができる、だから締切があるおかげで喜びが得られると、大要そんな内容であった。
なるほどという他はない。
私の仕事でも、依頼原稿や各種講演には締切があるし、学内の仕事にも当然締切はある。研究費の申請やら企画立案やらも、締切内に出すのが勝負の前提だ。授業だって日時が先に決められ、それにあわせて準備等をするのだし、試験採点もそうだ。
というわけで締め切りだらけなのだが、他方で、締切のない仕事もある。これは誰に頼まれたわけでもない、自ら企画立案した研究調査に基づく成果の発表で、最終的に論文ないし書籍という形にまとめあげて公表する。しかし自らの企画に基づくので、締切も自分で設定しないと存在しない。
他の、依頼等に基づく仕事は締切があるし、各種講演のように穴を開けるわけにもいかず延ばすわけにもいかない仕事は否応なしだし、それ以外も守らなければならない締切に押しつぶされる状態になっているので、どうしてもしわ寄せは自らの企画に基づく研究にかかってくる。
ではこの自らの企画に基づく研究に締切を設定せず、いつまでも、企画や調査に耽っていると、それが楽しいかというと、どうもそうでもない。やはり情熱とか問題意識とかは、対象にもよるかもしれないが、そう長続きはしない。大きな問題意識に基づいて、少しづつ研究を形にしていき、全体をまとめあげるというのが普通だが、少しづつ形にするプロセスを実行しないでいると、せいぜい2〜3年も経てば問題意識自体が風化してしまう。そうなっては企画立案段階の作業がいくら最も楽しいといっても、自己満足にもならない。
博士論文などは、大きな問題意識に基づいて、3年かけて一定の大作をモノにするわけだが、3年間調査研究をやって一気に書くというよりは、部分的にせよ研究会などで発表したり、あるいは指導教員の評価を受けたり、中間報告で広く意見を聞いたり、そして部分的に論文ないし研究ノートとして発表したり、というプロセスを経ることが多い。
というわけで、無限に時間があって好きなだけ調査研究に没頭できる環境は憧れの的なのだが、そうなっても自らスケジューリングを出来る人格でなければ、かえって無為な日々を過ごすだけになるかもしれない。やはり締切は、必要だし、その締切のおかげで、調査研究が形になって楽しみを実感できるのかもしれない。
こんなことをつらつら考えながら飛行機を降りたので、とにかく締切のある仕事を一つ一つ片付けていこうと、改めて当然のことながら思った次第。
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コメント
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投稿: north face jackets outlet | 2012/12/02 19:08