前科が残って消えないのはnetだけ?
たった今書いたエントリと似たネタになってしまうが、読売新聞サイトの以下の記事は実に微妙だ。
自分の名前をネットで検索すると犯歴を暴露するブログや掲示板が表示されることは、出所後すぐ気付いた。就職しようと十数社に履歴書を送ったが、全て断られた。「初めて人に会う時、どう見られているのか怖くて仕方ない」と話す。削除を請け負う弁護士がいると知り、依頼したのは昨年7月。これまでに6件の掲示板やブログを削除してもらったが、「モグラたたき状態」という。
特に困るのがグーグルのサジェスト検索。名前だけならすぐにはたどり着かない暴露サイトが、「詐欺」という言葉がセットで検索されると、すぐ表示されてしまうからだ。
ネットの怖さを指摘しているらしいこの記事の無邪気さには呆れ返る。
犯罪報道において実名や居住地域などを報じ、世間に周知させてきたのは新聞やTV等のマスメディアであり、そのメディアの問題性が指摘されてから数十年たつが、一向に改まらない。せいぜい、逮捕されれば呼び捨てで報じるという姿勢から、逮捕されれば「容疑者」をつけるという姿勢に転じたくらいである。
その実名報道こそが上記記事で指摘されている「終身刑のよう」な状況をもたらしているのに、ネットの問題性として記事にするのはよっぽどではないか。
確かに、ネット社会となって、過去のニュースが掘り起こされやすくなったことは事実である。一旦実名報道されれば、それが何処かに転載され、繰り返し検索されることでサジェスト機能による連想も働き、見つけられやすくなる。
しかし、数多い犯罪のすべてがネットで検索できるものではない。サジェスト機能だって、いつまでも同じ候補が現れるというものではない。だから放置しておいて良いという趣旨ではないが、それが真の問題ではない。
そもそもネットにより前科が調べられる様になったのは、実名報道されてこそなのである。
ネットの登場により初めて前科がいつまでも残って「終身刑のよう」と報じるのは、天に唾するのと同じである。
ちなみに、就職する際には履歴書を出さなければならず、履歴書には賞罰欄があり、前科があるのに書かなければ経歴詐称ということになろう。後でバレれば解雇も正当化される。その事自体は、犯罪を犯した者の更生を妨げるという問題が潜んでいるが、だからといって過去を偽り、過去を隠してもよいということにはなっていない。むしろ最近では性犯罪を中心に過去を隠させるべきではないという傾向も強い。そのことの当否や効果には大いに異論があるが、いずれにしても過去を単純に隠せば良いというものではない。
そういうわけで、上記の記事はあまりに無邪気すぎて、ナイーブというべきである。
(追記)誤解されそうなので念のため書き足しておくと、前科があれば生きにくい社会を良しとしているのではない。偏見は良くない。
また、そんな世間の偏見を前提にするなら、更生のためには前科がいつまでもほじくり返されて偏見にさらされるのは適当ではないというのもある程度は理解できる。
しかし、それをあたかもネットのせいのように、もともと実名報道しているマスコミが批判的に報じるのは、天唾ものだと書いているのである。
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