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2012/09/19

Palais de Justiceルーアン

ルーアンの裁判所 Palais de Justice は、かつてのノルマンディーにおけるパルルマンに起源を持つ由緒ある建物だ。
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ユダヤ通りという名の通りに面しているのは、この地域がユダヤ人街であったことを示している。説明書によれば、1306年にユダヤ人を強制退去させた跡地に建てられたということだ。

建築は15世紀末が最古で、16世紀にパルルマンとなった。この外観はまるで教会のようである。

セキュリティを通過して一階部分に入ると、すぐに、民事裁判・弁論と書かれた法廷があった。
中に入ると、まさに民事事件の弁論をやっている。

フランスでは、弁論期日はまさしく弁論のために行われる。両当事者の代理人が裁判官の面前でひとしきり、20分から30分くらい、弁舌をふるう。バーに立って淡々と書面を読み上げるのが大体だが、ここルーアンでは裁判官の机に書類をおいて、裁判官と50cmくらいのところに立って弁論する。それでも書面を読み上げる人と、書面は見ながらも普通に喋る人がおり、時折裁判官からも質問が飛ぶ。しかしほとんどは書面を読み上げて終わりである。最後にその書面を提出する。

リヨンの法廷でもパリの法廷でもそうだったが、日本でも傍聴がブームになる前はそうだったが、次の事件のために来ている弁護士や当事者が法廷内で待っていて、黒い法服だらけだ。
しかも、弁護士は法廷内をうろつき回り、ケータイを鳴らしては慌てて応答しに法廷を出て行ったり、あるいは弁護士同士で何事かをヒソヒソ話していて、法廷内は結構雑然としている。
法廷の大きさ自体は日本の標準的な合議法廷で少し広めなものと同じだ。

一つの事件の弁論が終わると、もう一つの事件の弁論が始まるのだが、廷吏が読みあげて始まるのではなく、待っていた弁護士が自分の番とばかりに法壇の前に行き、裁判官からQuel numero? (何番の事件ですか?)と聞かれる始末だった。

民事裁判法廷の他に、被告人で廊下がごった返しているところを抜けると、大きなホールに出た。
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パリの裁判所でも、リヨンの元の裁判所で今は控訴院となっている建物でも、こうしただだっ広いホールの回りに法廷の入り口がある。
この構造は、エジンバラのコートオブセッションでも同じであり、様々な絵に描かれているものだ。

さて、そのホールから入る法廷の一つがCour d'Assise(重罪院)だ。
重罪院は、高等裁判所=控訴院が一審を担う刑事裁判所で、日本の裁判員制度によく似た陪審制をとっている。日本に似ているのではなく、日本の制度がフランスをモデルにしたのだが。

重罪院の法廷は、壮麗であった。
写真は当然ながら禁止されたので、メディアのサイトから拾ってこよう。

Images

現在では、傍聴席向きと私訴原告向き、被告人向きに大きなモニターが用意され、書記官も備付けのモニターでコンピュータを用いて仕事をする。

法廷の後ろには、大きな絵が二枚。その内の一枚が、お約束のユスティティアだが、天秤を持った半裸の美女が、面白いことに剣ではなくガチョウか白鳥の首を掴んでいる絵である。奇妙だ。

今日傍聴したのは、ちょうど判決言渡し期日であった。殺人未遂で前科も沢山ある被告人に対して懲役15年が言い渡され、二つの争点についていずれも陪審の多数によりOuiと判断されたこと、そして15年といっても刑務所での規則を守っていれば、行刑担当判事の審理により仮釈放の可能性があることなどを裁判長が被告人に説明して、刑事法廷としては閉廷となった。

ちなみに法壇の方に向かって右側のガラスケースの中が被告人席、その前に弁護人席があり、向かって左側には検察官と附帯私訴原告の代理人と本人とが座っていた。傍聴席も被告人に近い右側に被告人の家族や友人がズラリと並び、左側には附帯私訴原告本人の家族が座っていた。

刑事法廷終了後は、陪審が解散となり、改めて裁判官と被告人が入廷すると、民事法廷として弁論が行われた。
これで閉廷し、判決を作成してまた開廷して言い渡すという手順であった。

以前パリで見たときは、最後まで粘って見たが、今回は私訴の判決までは待ちきれずに出てしまった。

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