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2012/08/09

ソーシャルメディアに乗ろうと思ったIOCの甘さ

インターネットは、ちょっと暴れ馬に似ている。
潜在的能力は抜群だし、誰もが憧れるが、甘い見通しでうかうかと乗ると、全然いうことを聞いてくれず、怪我をするよ。

ということで、ロンドン・オリンピックでは初のネット五輪とか、ソーシャリンピックとか、色々と言われているが、どうやらインターネットが思い通りにコントロールできると思って乗ったようだ。

Wired:選手個人がメディアになれるSNS、五輪で混乱も

2012年の夏季オリンピック大会は、初めての「ソーシャルメディアが活躍する五輪」になるという国際オリンピック委員会(IOC)の約束は、現実のものになった。

しかし、当初IOCが夢見ていたような、ハッピーなハッシュタグが並ぶ世界というよりは、野蛮なまでに率直な意見が問題化するという形でだ。もともとTwitterやFacebookは、暴動や社会運動に燃料を供給できるメディアだ。IOCはそれらのメディアがアラブの春に果たした役割を忘れていたらしい。

例えば、米国女子サッカーチームのゴールキーパーであるホープ・ソロは、Twitterでブランディ・チャステインに暴言を吐き、騒ぎを招いた。さらにオリンピック当局は、自転車競技中のファンたちのツイートが多すぎて、GPSとタイミングシステムの妨害になると非難した。

暴言を吐いただの、ファンのツイートが多すぎると嘆くだの、なんとも可愛いレベルのトラブルではないか。
それに、この後に出てくる憲章との抵触問題は、商業主義が抱える矛盾が露呈していて、いわばお馴染みの問題だ。
例えば、野球選手のパブリシティ権を選手と球団、あるいは選手とプロ野球機構とが奪い合うように、オリンピック選手個人の自己実現(自らの商業的利益追求も含む)とIOCなりスポンサー企業の権利とがぶつかり合うのは当然の帰結だし、憲章の一条をもって選手を一方的に押さえつけられると思ったら大間違いなのだ。

これが、ネットの言論活動でなければ、例えばユニフォームや備品などの広告規制とかであれば、比較的規制はしやすく、また規制される側も受け入れやすい。
しかし、Tweetとか、FBでの発言とか、ブログのエントリとか、選手等が自発的に、自分の言葉で表現する場をスポンサーの都合で規制しようとしたって、そう簡単には行かない。
ネット上の活動に規制を徹底しようと思えば、某国がやっているように、可能な限りの事前検閲と逸脱者に対する事後的な罰則の徹底をするしかない。それでも重大なほころびはしょっちゅうだし、検閲を可能にする体制自体への不満に飛び火しやすい構造を作ってしまっている。

 # あ、中国のことだと思った方は、日本の著作権業界のことも思い出してください。全くそっくりな感じで驚かれるでしょう。

ついでながら、トップアスリートにとって、ソーシャルメディアを通じて一般大衆とつながることは、いわばファンクラブを持つようなものかもしれないが、ファンの中には変質的なのもいる。ホイットニー・ヒューストンの「ボディガード」を思い出すまでもなく、常識だ。野球でもサッカーでも、応援団やサポーターが贔屓のチームを口汚く罵るシーンはお馴染みともいえる。ソーシャルメディアのファンだけが、そうした連中と無縁だとは言えないし、むしろネット上のやり取りは表現の節度を失わせやすいことで有名だ。
その結果、ファンの側としては残念なことだが、アスリートの方が重圧に苦しみ、ネットのコミュニケーションをやめてしまったりする。→オリンピック選手がTwitterを中止する理由

結局、従前の商業主義のじゃまにならないようにするには、NHKがやっているような動画配信を積極的に推進するにとどめ、選手たちや観客が会場からダイレクトにソーシャルメディアに発信できるような機会をもうけたりはしないというのが無難なところだ。
そして、それはもう時代錯誤ともいうべき対応であることは明らかである。
従って、従前の商業主義は限界を認めて無駄な抵抗をしないというのが吉だ。むしろ巧妙にソーシャルメディアに忍び込んで経済的利得を追求したほうがよい。そして暴れ馬のような側面は、IOCがどう考えようと一方的なコントロールには馴染まないのであるから、選手たちやこれを応援する一般人の方で、適切なメディア技術を活用しつつ、自らコントロールするほかはなかろう。

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コメント

インターネットの潜在能力っなんですかぁ?
こんなもの悪い事をするのに都合が良いだけで、無限の悪事を働ける能力のことですかぁ?

投稿: 鹿島渡 | 2012/08/09 14:19

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