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2012/07/16

police:人質司法只今進行中だが。

読売onlineその他の報道によれば、菊地直子容疑者がこの7月15日に再逮捕されたそうだ。
彼女が最初に逮捕されたのは6月3日であるから、既に43日間にわたって身柄を拘束され、警察の代用監獄において取調べを受ける毎日が続いている。この先22日とすれば、60日を超える。

高橋克也容疑者の方も再逮捕され、6月15日から連続1ヶ月越えの身柄拘束を受けている。

容疑者の身柄を押さえ、自白を引き出すまで長期間にわたって取調べ続ける捜査手法、そして自白するまでは代用監獄たる留置場で、警察の管理下におき、保釈はもちろん拘置所にすら移さないで取り調べを続ける捜査手法は、「人質司法」と呼ばれ、冤罪を生むメカニズムの代表格とされている。

村木さんの事件以来、こうした人質司法に異を唱える人は非法律家にも多くなったと思っていたが、その人達は今どこにいるのかわからないくらい、菊地直子らの長期間留置取調べに対しての疑問の声は上がらない。

小沢一郎が検察の取り調べを受けた時に、あれほど騒いで、可視化議員連盟まで作って不当な取調べの撲滅に政治的に動こうとしていた森ゆう子議員等の人たちは、今どこにいるのか?
やはり小沢が絡まないと、刑事手続の適正化などはどうでもいいことなのだろうか?

再逮捕・勾留を繰り返して、長期間の身柄拘束と取調べ強制を行うことは、逮捕勾留の期間を最大でも22日間に限った刑事訴訟法の基本的な考え方を踏みにじるものであり、長期間の拘禁は拷問的効果が認められるし、虚偽自白を生みやすいことは異論の余地もない。明らかに脱法行為だ。

にも関わらず、捜査の必要性の名の下に容認するならば、せめて、不当な長期拘禁に更なる不当な取り調べ手法(偽計や恫喝ないし脅迫、さらには暴行など)が行われないように、取調べ過程を検証できる形でのビデオ撮影をしておくべきだが、そうした声はごくわずかにしか聞こえない。
見た限りでは、江川紹子さんが可視化を必要とツイートしていた。

捜査過程の適正化とか、違法な取調べが行われないようなルール作りに向けての議論が随分と盛り上がっていたように見えるのだが、オウム真理教の実行犯たちと目される容疑者たちは別だと考えているとすれば、それは考え違いというものだ。
刑事裁判で有罪と判断されるまでは、村木さんも菊地直子も、等しく無罪推定を受け、不当に長期の身柄拘束と取調べは許されるべきではないし、仮にその点を譲るとしても、不当な取り調べ手法で自白を強要するようなことはあってはならず、そのためには可視化が必要である。

手続の適正化を図るルールは、無実の人だから適用されるべきなのではなく、無実かどうか未確定の人たちに、それを適正に決めるために適用されるべきなのだ。

なお、事実認定の適正化について、元裁判官の立場から書かれた論考として、以下の本の、特に11頁以下の講演録や45頁以下の田宮追悼論集に掲載された論文は十分参考にされるべきだ。



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