Civil Action Japanの意見広告
生活保護受給者バッシングの促進役となった片山さつき議員らのお笑いタレント個人攻撃に対して、以下の様な意見広告が毎日新聞7月12日付け朝刊に掲載された。
「制度を改正するために個人を攻撃する必要はありません!」
#CIVILACTIONJAPAN(シビルアクションジャパン)
画像および標語はCAJのブログおよびフェイスブックページより引用した。
極めて多くの論点が絡まっているテーマだけに、なかなか整理がつかないのだが、上記広告については二点に限って注目点を指摘したい。
第一に、広告の中身である個人攻撃への違和感には基本的に共感し、同意する。
生活保護制度には様々な矛盾が内包され、特にヤクザによる不正受給がまかり通っているなどの問題がかねてから指摘されていながら、臭いものに蓋的な問題先送り体質から改善はされて来なかった。その状況に一石を投じ、不正受給問題をクローズアップされたという意味では、片山さつき議員らの行動も評価できるかもしれない。
しかし有名人で一応の金持ちとは言え、一受給者の親族を槍玉に挙げてバッシングするというやり方は、不当なものだ。片山さつきさんたち国会議員は、個別の不正受給を次々と暴いていって不正を正すという役割を担っているわけではない。もしそういう役割を買って出るのであれば、不正がはびこっているとしてかねてから問題視されているヤクザ・暴力団の受給者とか、あるいは労働組合員の親族の受給者とか、そちらの方にもどんどん切り込んでいきそうなものだが、そんな気配はない。要するに、河本さんのお母さんのケースは、制度の問題性をあぶりだすシンボルケースとして挙げただけのはずなのだが、その後の経緯はまさに個人攻撃。河本さんの反応が気に入らないと言ってどんどんとバッシングする。このやり方は権力の濫用といっても過言ではない。
仮に河本さんが生活保護制度の設計なり運用なりに責任を持つ立場で、その人が自ら不正を働いているとか、不正も許されるというような見解の持ち主だとすれば、個人を槍玉に挙げることも許されようが、彼はそういう立場の人ではない。
片山さつき議員らの行動は、正義の味方を気取って、一個人の問題をことさら取り上げて追及し、大衆が叩きやすい「水に落ちた犬」を創りだしたに過ぎない。
そういうことで、上記の意見広告には共感する。
もう一点注目したいのは、上記の意見広告がネットでのつぶやきに多数の共感を呼んで、多額の費用を必要とする新聞広告という行動に結びついたという経過だ。
その経緯はフェイスブックやブログに綴られているので、上記のリンクからたどっていただきたいが、脱原発デモにせよ、東北復興のための寄付やボランティアにせよ、あるいは不幸な転帰をたどったとはいえStudyGiftのようなクラウド・ファンディングにせよ、情報ネットワークのコミュニケーション機能が作り出す「意志」の糾合とも言うべき事例の一つとして記録しておく価値がある。
ネットが声なき声をまとめあげて見える声にするという現象は、最近も注目されているが、最近始まった動向というわけではない。
この本は、藤前干潟の保存運動を記録したものだが、既に20世紀の末期からインターネットによる意志の糾合が現象として起こっており、それが現実の政治を動かしてきたのである。
もちろん当時のコミュニケーションの主役はeメールであり、特にメーリングリストであった。ツイッターのようなオープンで柔軟なコミュニケーションツールはまだなかった。ネット環境は、通信インフラも含めて大きく発展し、その上でのコミュニケーションが政治的・社会的に影響力を強めていることは疑いのないところだ。
ただし、現実の政治を動かすかどうかは、テーマの大小、複雑度合い、行政の姿勢、利害構造の強弱などに左右され、意志の糾合の方もデモや広告などで声を上げるにとどまるか、実質的な政策形成過程に継続的かつ効果的に関与して、ネットで糾合された意志を実際に反映させられるか、予断を許さない。
その意味で、上記広告を達成したCivil Action Japanという団体(?)が何を目標としているのか、次の一手があるのか、あるとしてそれはどういう方向に行くのか、片山さつき議員らの行動を批判するのには共感できるとしても、肝心の生活保護制度の問題に切り込むのか、それとも国会議員の活動一般に対する制度論につながるのか、その辺りが見えない。
新聞広告を出しただけで十分というのであれば、それはそれで一つの立場だし、目的を達して偉いということもできる。今後も様々な問題について同様の手法で問題提起をするというのであれば、そういう存在理由もあるだろう。
いずれにしても、この先の行動に注目だ。
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