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2012/06/15

DV:宮崎家裁のミス

よくある、しかしよくあっては困るミスである。

DVで妻避難、その住所を誤って夫へ…裁判官

宮崎家裁などによると、夫は2010年12月、妊娠中だった女性に暴行を加えたとして宮崎県警宮崎北署から警告を受けた。出産後の11年2月には、再び女性を殴ったとして暴行容疑で宮崎区検に書類送検された。女性は自宅とは別の場所に避難した。

 女性は同5月、宮崎家裁に生活費の分担請求を申し立てた。その際、夫からDV(配偶者や恋人からの暴力)被害を受けていたことや、現住所を夫に知らせないでほしいという要望を家裁に伝えた。しかし担当した女性裁判官は、双方の現住所が記載された審判決定文書を夫と女性に送ったという。

住所を秘匿して安全を確保しているDV被害者の事案を取り扱っていながら、その住所を相手方に送ってしまうというのは間抜けにも程がある。

DV防止法には、以下のような条文がある。

第23条  配偶者からの暴力に係る被害者の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、被害者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。 2  国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、被害者の人権、配偶者からの暴力の特性等に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとする。

上記のような家庭裁判所裁判官・書記官は、明らかに秘密保持義務違反であり、2項に定める研修が不十分ということであろう。

記事によれば、「女性側は家裁に転居に伴う費用の負担を求めたが、家裁は応じなかった」そうだが、手続的に難しいとしても、なんとかすべきである。

なお、住所秘匿措置については、様々な工夫がされている。
例えば岡山家庭裁判所の例を見てみよう。
家事審判・調停申立書〔面会交流〕pdf
この申立書には、普通に申立人の住所氏名を記載する欄があるが、一枚目の末尾に以下のような記載がピンク色に縁取られて目立つように書かれている。
「【申立人の方へ】 この申立書は,申立人(あなた)がどのような内容を申し立てたのかを相手方に知らせるために, コピーを相手方に送付しますので,あらかじめご了承ください。」

そして、進行に関する照会書には、冒頭に「非開示」とあり、「この用紙を相手方に見せることはありません。」と太字で書かれている。
その中に相手方の暴力に関する状況説明を記載するようになっている。

これとは別に、「事情説明書」があり、こちらには「この用紙は,相手方には送付しませんが,相手方から申請があれば,閲覧させたりコピーさせたりする可能性がありますのでご注意ください。」と明記してある。

そして最後に、連絡先等申告書という書面が別にあり、これにも「非開示」と記載され、
職業と勤務先について、申立人の方には秘匿希望の有無がチェックできるようなっている。
加えて住所も「秘匿希望の場合のみ記載」として申立人住所を書くようになっているので、最初の申立書の住所欄に自分の住所を記載しない場合に、こちらに記入するということとなっている。

ここまで情報管理がきちんと区別されていれば、宮崎家裁のようなポカは起こりにくいであろう。ただ、宮崎家裁のケースは、決定書に漫然と両当事者の住所氏名を記載したというのだから、その部分を起案した書記官か裁判官かの意識を高めることはいずれにしても必要だが。

参考までに、東京弁護士会が東京家庭裁判所家事部の書記官にインタビューした小冊子がPDF公開されているので、そこで住所秘匿がどう扱われているかを引用してみよう。

申立人の住所を相手方に秘匿したい場合,その旨を明示してください。ただし,その場合でも,裁判所には住所を知らせてください。代理人が辞任をした場合など,裁判所が申立人と連絡をとれなくなるおそれがあるなどの支障が予想されるからです。なお,申立代理人の事務所を申立人の住所として記載することの可否については,裁判官により判断が分かれています。申立人の住所として代理人事務所が記載されていたり,申立人住所について「東京都 以下秘匿」と記載されていたりする申立書が散見されますが,最終的に債務名義(調停調書(成立),審判書または調停調書(不成立))上に,当事者の住所をどのように記載するかは,当事者の意見も充分に踏まえた上で,裁判官が判断しています。

裁判官が適切に判断するのだから、すべて明らかにして任せろ、悪いようにはしない、というわけだ。
しかし、上記記事のようなミスが積み重なると、誰が信じるのか、ということにもなりかねない。そうした危機感を持って、繰り返しになるが、DV防止法23条に定める必要な研修を十分行なってほしいものだ。

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コメント

ある所で、被害女性の書き込みを拝見しました。
『新聞に載る前は裁判所を訴えることも考えましたが、相手が裁判所ということで弁護士にも煙たがられ、泣き寝入り状態でした。』
『裁判所からの連絡は一切なく、新聞社に対する回答として「お金が欲しいなら裁判にしてくれ」というものでした。
もちろん、こちらが裁判費用がない、裁判所相手に受ける弁護士がいるはずがないというのが分かった上での回答だと思います。
情報を漏らしたのも、当初、私は書記官と聞いていたのですが、実は女性裁判官だと新聞を見て知りました。
嘘を言っていたこと、ここまできてもこの対応に怒りと悲しみでいっぱいです。』

多くの被害女性は取るものもとりあえず逃げられている方が多いのに、この対応は酷いと感じました。

最近も常滑市で情報漏れがあり、市は数十万支払ったそうです。以前は伊万里市でもあり、同じように市は被害女性に支払ってます。

洩らした相手が司法なら、被害者は泣き寝入りしかないのでしょうか。

投稿: 拓海銀二 | 2012/06/28 19:04

まあ、裁判所の行為に対する国家賠償が認められたケースも無いことはないし、その場合に事件を引き受けた弁護士がいたわけですから、望みがないわけではないと思いますが・・・。

投稿: 町村 | 2012/06/28 19:38

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