DB:イマドキの法律データベース
ロースクール時代となって著しく進歩したものの一つに、法律データベースがある。
裁判所の判例公開や総務省の法律データ提供など、オンラインでの法律情報公開が技術的に進歩したのがたまたまロースクール開校の時期だったとか、同様に司法制度改革の影響下で進んだということももちろんあるが、商用データベースの普及はロースクールが積極導入したからである。
昨日学内で学生向けにデータベース説明会を行ったので、法律データベースも、徐々に発展を遂げていることを改めて再認識した。
昨日のデータベースは栃木県に出自を持つ大手のもの(といえば分かる人はピンと来る)だが、判例や法令、雑誌記事の書誌情報などに加え、学習支援システムも備えて、少なくともロースクール的にはかなりの完成品と言うことができる。
今回の説明会で改めて便利さを感じたのが、法律出版最大手の有斐閣が提供するVPassである。
VPassというと、あるクレジットカードのオンラインシステムと同じ名前で紛らわしいが、以下の文献が集録されている(私の勤務校の環境下)。
法学教室
判例百選・重要判例解説
判例六法プロ
判例百選というのは法律を大学・法科大学院で学んだ経験があれば誰でも知っている、裁判所の重要な判決を分野ごとにセレクトして、事実関係と判決要旨、そして解説を加えたものである。
これを検索して記事を表示させると、7日間有効と書かれたPDFファイルがダウンロードされる。当面の学習には十分なものといえる。
この他にも、法学紀要データベースは、全国の大学法学系学部・学科が出している雑誌の書誌情報と、一部はPDFによる本文表示もなされることになっている。ただし、今見たところでは、「この権限ではPDF本文を表示できません」となってしまうので、全文が見られるのかどうか疑問ではある。
ちなみに、大学紀要はCiNiiや大学独自のアーカイブないしリポジトリから全文にアクセスすることがかなりの程度可能であり、これまた法律や判例と同様に、素材提供だけでは駄目で、いかに独自の付加価値をつけるかという勝負になっている。
しかしこうしてみてみると、いわゆるソーシャル機能は、まだどのデータベース会社も取り込んでいないと感じるし、付加価値の付け方も新規なアイディアだけでなく陳腐ではあるが必要な機能も十分実装するに至っていない。その点で、まだまだ進歩の余地が残されている領域である。
データを提供する側の出版社も、あるいは大学なども、利用してもらってこそ将来の売上や地位向上につながるという基本的な認識の下、情報公開や利用可能性の拡大に積極的になるべきであろうし、より積極的な利用可能性を広げる媒体にデータを提供していく必要がある。
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コメント
う〜ん、単なる印象ですが、データベース運用側は、自分のところのデータベースにはソーシャル機能をつけることは望んでいないのではないでしょうか。
投稿: さしみのつま | 2012/04/15 18:45
運用側がその自らのためのメリットを認めないと、そうでしょうねぇ。
投稿: 町村 | 2012/04/15 19:45