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2012/03/21

SPEEDIの予測データをメールで受け取った福島県

東京新聞が、原発事故当時のSPEEDIの活用に関連して福島県の対応を報じている。
福島県が拡散予測消去 当夜から受信5日分

文部科学省の委託で放射性物質の拡散を予測するシステム(SPEEDI=スピーディ)を運用する原子力安全技術センター(東京)によると、センターは震災当日の昨年三月十一日午後四時四十分、文科省の指示を受け福島第一原発から放射性ヨウ素が毎時一ベクレル放出されたとの仮定で試算を開始。一時間ごとに文科省や経済産業省原子力安全・保安院にデータを送った。/
 国の現地対策拠点となったオフサイトセンター(OFC、福島県大熊町)と福島県にも送る予定だったが、震災で回線が壊れたため送れなかった。/
 だが、メールの回線ならば送れることが分かり、十一日深夜、OFCに隣接する県原子力センターからの送信依頼を受け、予測データの画像を県側にメールで送信。十二日深夜には県庁の災害対策本部にも同様に送り始め、一時間ごとに結果を更新し続けた。/
 ところが、県の担当者によると、十五日朝までメールの着信に気づかず、それまでに届いていたメールは消してしまったという。/
 県は「予測は役に立たない」として、その後も送られたデータを公表せず、市町村にも知らせなかった。/
 これらとは別に、県は十三日午前十時半ごろ、保安院からもファクスで拡散予測を受け取っていた。こちらも十二~十三日早朝までのデータだったため、「既に過去のもので、正確ではない」として公表しなかった。

このうち、ファックスで県に送られたという話は、下記文献の200頁以下と、177頁に、県議会答弁で触れられている。

通常の自動化されたシステムが地震でダウンしている場合に、メールで送ったり、ファックスで送ったりして情報を共有しようとした文科省の対応と、菅首相や枝野長官、細野補佐官、海江田大臣などには彼らがマスメディアを通じてSPEEDIの存在を知らされる3月14日か15日頃まで一切、存在も名称すらも知らせようとしなかった対応とは、大きな齟齬がある。

大体、SPEEDIについては前提となる放出源データを解析するERSSが地震でデータ伝送できなくなったため、使えなかったというのが大雑把な説明だ。しかしながら、上記のように現地自治体へのデータ転送はなされていた。その前提となるデータは、仮定の放射性物質放出を用いたものだったが、後から調べた放射性物質拡散状況と概ね一致する正確な予測であったという。
さらに、使えないシステムという割には、様々な仮定を入力したシミュレーションには最大限活用されていたようで、原子力安全・保安院も文科省も原子力安全委員会も原子力災害現地対策本部も、3月11日から16日までの間に合計100件弱の予測計算を行なっている。
ERSSのデータが得られなかったというのもかなり大雑把で、上記文献でERSSの機能の一つとされる「プラント事故挙動データベース=PBS」から「事故の状況に近いデータ」の提供を受け、その他のデータと合わせて、3月11日から13日までデータが原子力安全・保安院に送付され、12日には1号機についてのSPEEDIの解析データを打ち出していたのである。
これもまた役に立たないデータとされたのであろうか?

もう一つ、忘れられないのは、アメリカ軍当局には3月14日段階で「緊急事態に対応してもらう機関に、情報提供する一環」として提供していたという事実だ(上記文献174頁)。

結局、SPEEDIという120億円も国家予算を投じてきたシステムは、原発事故の時に結構使えるシステムであり、実際の放射性物質拡散状況と合致する予測を出したということが実証されたし、それは必要とされる放出源情報が入手出来なかったとしても結構使えるものであった。
それが避難の範囲决定に直接役に立つかというと、福山副長官は後から振り返っても否定的な見解を明らかにしている(上記文献178頁)が、そもそも政策決定者が知らなくて良いデータだったとは到底言えない。
避難対象を同心円状に設定することはやむを得なくとも、福島県担当者がメールをきちんと受け止めて、拡散予測を認識していたら、少なくとも放射性物質が流れてくると予想される方向に避難させることはなかったのではないか?

で、パニックを防ぐ目的で国民からは結局隠されたSPEEDIの情報であるが、上記文献も「天気予報のごとく公開すべきだったとは思えない」(181頁)と書きつつ、すぐ後でドイツ気象庁の予測データ公開などを挙げ、適切なリスクコミュニケーションを図るべきだったと、よくわからない書き方をしている。

しかし、総じて見て、パニックを起こしていたのは官邸の首脳陣と原子力行政担当者の方であって、国民のパニックを恐れて云々というのはちゃんちゃらおかしいのである。
第一、120億円もの予算を投じ、しかも原発安全の見せ玉として宣伝もしていたSPEEDIの存在を、事故時に隠しおおせるという前提が全くあり得ない。
SPEEDIの存在を知っている人から、その予測結果を明らかにせよと迫られ、正確なデータが得られないから予測結果を出していないといい、つまり予測はできないといえば何が起こるか? それこそパニックではないか。
そして後になって、「実は予測はしていました、実際の拡散状況をよく予測してました、しかしそれは使いませんでしたし、官邸トップにも報告しませんでした、いや、アメリカさんには報告しましたが。もちろん避難の方針決定にも使いませんし、その結果、放射性物質が流れてくる先に避難するという住民がいたとしても、やむを得ませんでした」ということになって、何が起こるか? 政府発表に対する決定的な不信だ。

現実の避難状況も、冷静に、パニックを避けながら、適切な誘導を行ったとはとても評価できず、現に入院患者の避難では何人もの死者を出している。

要するに、政府(官僚組織)が放射性物質の拡散予測をしておきながら、不確かだから混乱を招くとか、パニックを防ぐとか、そんな判断をできるほどの能力は政府(官僚組織)にはないのである。既に組織的パニックを起こしている政府(官僚組織)が、国民のパニックを防ごうと情報操作するなど思い上がりも甚だしい。
まさに、天気予報のように、情報はすべて公開するのがよいのだ。

そうでなければ、海外の玉石混交な報道にすがりついたり、もっと悪くすれば悪意あるデマに惑わされたりする。

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