nuk:福島事故原発事故独立検証委員会調査・検証報告書
1000ページを超える長大な報告書であり、まだ3分の1程度しか読めていないが、世間でもっとも注目を集めていた官邸の事故対応についてはよく分かった。
マスコミのうちでも、読売の記事「菅首相が介入、原発事故の混乱拡大…民間事故調」は、官邸の対応、特に菅首相の対応が事態を悪化させたという側面を強調し、これに対して日隅さんは報告書を読んで、「【激怒!】民間事故調の報告書で明らかになったのは、官僚の機能不全!」と書かれている。日隅さんは、以前にも紹介したと思うが、下記のような本を出されている。
しかし、この報告書のトーンは問題点の指摘であり、読売のような見方も日隅さんのような見方も一面的すぎると思われる。
確かに、菅首相が細かいことに逐一自分で判断しようとし、事故処理対応に追われている現場に自らが乗り込んでいき、その他高圧的に接したのは、原子力保安院も斑目委員長を始めとする専門家チームも頼りにならず、さらには東電との間に情報流通不全ともいうべき状況があったことが原因だった。
その意味で、「これではどの総理が来てもうまくいかなかっただろう~民間事故調の報告書に実際に書かれていること」というのは正しいかもしれない。
その一方で、菅直人首相の個人的資質を別にして、原子力事故に対処する責任を負うべき政府が機能不全に陥っていたことは否定しがたい事実であり、その原因は、長年の安全神話に自家中毒となっていた電力会社と原子力ムラを構成する原子力関係官僚組織、関係学者連中の基本姿勢にある。
安全神話に寄りかかるあまり、安全のために必要な措置を怠ってきたことは、前のエントリでも指摘したところだが、この報告書でも初っ端の検証委員長メッセージに衝撃的なことが書かれている。
「安全性をより高める」といった言葉を使ってはならない雰囲気が醸成されていました。電力会社も原子炉メーカーも「絶対に安全なものにさらに安全性を高めるなどということは論理的にあり得ない」として彼ら自身の中で「安全性向上」といった観点からの改善や新規対策を取ることができなくなっていったのです。
そんな中で津波対策のさらなる必要性が指摘されても握りつぶし、全電源喪失対策を付加するよう海外技術者から指摘されても握りつぶしてきたわけだ。
きっかけは予想を超える巨大津波であった。その点では不可抗力と言えなくもない。しかし、事故が起これは地域の壊滅を招く危険設備であることは十分承知の上であり、事故を起こさない対策は可能な限りとることが求められるのに、その必要性を認識しながらやろうとしなかったのであるから、要するにはこれは重大な過失が招いた事故であろう。
改めて、そうした確信を抱く。
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