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2012/03/12

jugement:業務提供誘引販売に対する業務停止処分が取り消された事例

さいたま地判平成23年2月2日PDF判決全文

日付をよく見ると、去年の2月のことで、大震災前というのはかなり昔な感じがある。ケータイ・カンニング事件で盛り上がっていた頃だろうか?

それはともかく、この判決は、特定商取引法上の業務提供誘引販売について、県知事の業務停止処分が取り消された事例であり、消費者法的には重要である。

事案は、軽貨物自動車の販売とそれを使った運送事業の斡旋をするという業務提供誘引販売取引に関して、原告が広告の表示につき特商法53条3号及び同法54条違反、契約書面につき同法55条2項2号違反をしていた。
 具体的には、業務の提供条件として一定の期間内に業務を提供したり、あっせんする回数、業務に対する報酬の条件などを明示すべきなのに、一定期間内に業務をあっせんする回数を記載していなかった(53条3号違反)。
 また業務によって得られる利益の指標を示すときは、その指標通りの利益を得ている者の割合を示すなど、利益見込みに誤解を招かないようにすべきで、事実に反したり優良有利誤認を招かないようにすべきなのに、「現況月収例(完全出来高制)25万~35万円以上可」「2009年度の実績を基にしています」との表示をしていて、これは事実に反したり、根拠がないものであった(53条3号および54条違反)。
 契約書面についても、業務の提供またはあっせんの条件として「業務の量については、1週間、1月間その他の一定の期間内に提供し、又はあっせんする回数又は時間を記載しなければならない」のに、「会員が希望した場合に月にどの程度の頻度で業務があっせんされるのか、あるいは会員が希望しても一定の回数や頻度等で紹介することは約束できないのかといった点の記載がない」(55条2項2号違反)。
 そこで埼玉県知事が、特商法57条に基づく営業停止処分を下したが、その際同条1項の「業務提供誘引販売取引の公正及び業務提供誘引販売取引の相手方の利益が著しく害されるおそれがある」かどうかが問題となった。

 裁判所は、上記53条3項および54条違反の点は、公正・利益を著しく害されるおそれありと認めたが、53条3号違反の点は「この事項の表示がないことによって直ちに消費者が不当に本件取引に誘引されるとはいえ」ないので、上記のおそれなしとした。
 契約書面に関する55条2項2号についても、同様に、業務をあっせんする回数の記載がなくても仕事の内容や完全出来高制であることは理解できるから、不当に誘引されることはなく、57条1項のおそれは認められないとした。

 かくして53条3項および54条違反による業務停止処分は認められそうだが、原告は弁明書で前年度の利益実績を示すように改善するとし、次期の広告では利益見込みを示さないようにするとした。
 裁判所は、この点を考慮せずに業務停止処分を下したのは裁量権を濫用したものだと判断し、処分を取り消したものである。

 この事業者は同時期に北海道知事からも業務停止処分を受けていたのだが、そちらの方はどうなっているのか明らかではない。が、いずれにしても、広範な地域で業務を行なっていたものだ。

 特商法の個別条項で要求されている表示について、違反が認められたとしても、それが「業務提供誘引販売取引の公正及び業務提供誘引販売取引の相手方の利益が著しく害されるおそれ」に直結しないということが本判決により示された。
 刑法では、構成要件該当性が認められると原則として違法性ありとの評価を受けるわけだが、特商法は構成要件に該当してもなお、公正・利益を著しく害するおそれが当然には認められないというわけで、刑法の構造とは異なるわけである。

 このことは法律の文言にも合致するところで、違反行為に対する主務大臣の指示を定めた56条は公正・利益を「害するおそれ」を要件とし、「著しく害するおそれ」を要件とする業務停止処分よりも広い要件となっている。それだけ、業務停止処分は重いというわけである。

 法解釈論的には、あと、おそれなしという判断について実体的に問題があるのではないかという切り口が可能だろう。加えて行政庁の処分取消は、行政庁の萎縮を招きやすいので、判決の当否とは別に不幸な結果ということができる。

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