平成23年のストーカーとDV統計
各種報道によれば、警察が平成23年中のストーカー及びDV事案の統計を公表したようだ。
ストーカー被害の認知件数 14,618件
警告件数 1,288件
禁止命令件数 55件
DV被害の認知件数 34,329件
警察庁が、平成23年3月10日付けで下記のデータを公開している。
ストーカー事案及び配偶者からの暴力事案の対応状況について(PDF)
それによれば、平成22年中に全国の警察が認知したストーカー被害は16,176件。DV被害は33,852件となっている。
この数字は、いずれも相談から検挙まで様々な方法で認知した数であるから、同一事案が複数含まれている可能性が高いが、他方で現場の警察官が相手にしなかった例は含まれていない。ということでは甚だはっきりしない。今年の報道の中には、専門家の指摘として実際の被害は10倍だという意見が見られた。
警察の対応が変化するということもありうるので経年変化が被害数の変化を直ちに表すものではないという弱点がある。
それを踏まえた上で、少なくともDVは、警察の認知件数でも増加傾向にある。
ところで、ストーカー事案に対する警告が1,288件、禁止命令が55件というのは、いかにも少ない。こうした命令ではなく、実質的に被害者を保護するための施策を行なっているのだというのが警察の言い分であろうが、警告や禁止命令による抑止効果を軽視すべきではない。
比較対象としての適切性はともかく、裁判所がDVについて下す保護命令の件数は、平成22年で2,434件ある(司法統計より)。警察の認知件数でDVがストーカーの倍あるから、保護命令が警告の倍あっても不思議はないと思われるかもしれないが、他方で裁判所による裁判を経なければならない保護命令と、警察限りでの警告とでは、手続の重さが段違いである。
そして、警察が認知したDV被害数に比べて保護命令の発令件数は約7%しかないというのも、被害者が法的手続をとることの困難性を印象付けるものだ。
ちなみにDVセンターへの相談件数は平成22年度で77,334件を記録しているのである。
これらの数字から何かを言うことは難しいが、私の参加している研究会では、DV対策に関する比較法と国内法および行政対応の総合研究をおこなっており、個別の施策や法の問題点などを検討していくと、DVに対する制度的な不備がまだまだ沢山あるという実態が見えてくる。
上記の数字は、その表れと、取り敢えず解釈しておこう。
詳細は今年中にも公表する予定の報告書に詳述する。
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