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2012/02/10

arret:ヤミ取り立て屋の手口に断罪

最決平成24年2月6日PDF決定全文

サービサー法に基づく登録をしないで、他人の債権をかき集め、取り立てたということで有罪判決がでた。
サービサーというのは、バブル崩壊後の不良債権処理の必要に迫られて作った、公認取り立て屋のことで、法律に基づいて登録が義務付けられており、弁護士法の規制との調整のため弁護士を取締役にシなければならないなどの要件がある。

この被告人は、登録貸金業者だが、自分では貸付をしないで取り立て専業だった。
他人の焦げ付き債権であるから、当然簿価ではなく、貸付残高の6〜7%で大量購入し、次のような取立行為をする。

本件債権の回収方法は,最終期日を10日後等に指定した上で,それまでに連絡がない場合には,全額集金に行くか,強制執行への移行など断固たる措置をとる旨記載するなどした書面を債務者らにいきなり送付し,電話で督促するというものであり,債務者の勤務先の社長にも多大な迷惑,損害を及ぼすことになる旨記載した書面を勤務先内の債務者宛てに送付したり,勤務先に宅配便の運転手を装って電話をして連絡先の電話番号を伝え,電話をしてきた債務者らに対し,支払要求をしたりすることもあった。そして,被告人らは,債務者らと支払条件の交渉をして分割払の方法で本件債権の弁済を受けるなどしていた。

暴力的な取り立てとは言わないまでも、高圧的な取り立てではある。

またこの事件では、利息制限法の制限利率に引き直して過払いになっているものまで、約定利率の下で未払い債権があると主張し、取り立てをかけている。
既に利息制限法制限利率を越える部分は債権として存在せず、払ってもらったとしても返さなければならないことが確定してるのであるから、そのことを知りながら、債権があると主張して取り立てをするのは、もはや詐欺行為であろう。架空請求と同列だ。

なお、上告理由では、この種の業務を「社会的経済的に正当な業務の範囲内であるから違法性が阻却される」と主張している。しかし、いくら被告人のための主張といっても、仇討ち殺人は正義の行為で違法性が阻却されるとか、金持ちから金を盗んで貧乏人に分け与えるのは違法性が阻却されるとか、真顔で主張する弁護士はいるまい。
非弁行為の典型とも言うべきヤミ取り立て屋の行為を、「社会的経済的に正当な業務の範囲内」だと主張する弁護士さんは誰かなと思ったら、有名な先生だったので二重にびっくり。

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裁判例」カテゴリの記事

コメント

債権譲渡は合法な社会的経済的に正当な業務の範囲内である。
最高裁は棄却判決を得意技とすることを批判していただきたい。

投稿: 佐々木実之 | 2012/02/10 12:21

債権譲渡自体はそうでも、取立て目的の債権譲渡を業としてやれば、非弁行為で無効かつ違法です。

投稿: 町村 | 2012/02/10 15:40

刑弁の実務も知らないで、弁護活動に安易な批判をしてますね。残念ながら、光市事件弁護団への言論封殺・弾圧事件と同種の発想と言わざるを得ない。
弁護人が相手にするのは、冤罪製造装置の検察庁と冤罪追認装置の裁判所であるということをくれぐれも忘れないで頂きたいものです。

投稿: パブ弁! | 2012/02/12 11:04

>取立て目的の債権譲渡を業としてやれば、非弁行為で無効かつ違法です。
という解釈は、違うと思います。サービサーでなくても債権譲受を業として行い、取り立て行為をしている会社はいくらでもあります。クレジットカード会社は、加盟店の売掛債権を譲り受け、カード会員から取り立てを行っています。銀行は、手形債権を譲り受け、取り立て行為を行っています。最近では大学などでも、学納金の口座引き落としが増えていますが、それも、大学から信販会社が債権を譲り受け、学生から取り立てる(口座引き落としする)という契約がほとんどです。

サービサー法の解釈も、親にあたる弁護士法73条の解釈も、字義通りしてはいけないというのは昔から言われていることです。そうでなければ、コンビニの店員が商品を売るのも、売買契約という法律事件を代理して締結するという法律事務を報酬を得て業として行うものですから、弁護士資格がないとコンビニ店員にもなれないことになります。

事件性=紛争性が言われることもありますが、例えば、総合商社の従業員が、大口の鉄鋼の取引などで、価格や納期や品質に争いがある場合に商談できないかというとそんなことはない訳です。だから「身内なら非弁はOK」という説を言う法務省の偉い人もいました。

最高裁は、事件性や内部者除外の立場ではなく、次の判例で「合目的的解釈」という立場を示したと思います。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52301&hanreiKbn=02
平成14年01月22日平成12(受)828号最高裁判所第三小法廷

だから、「違法性の阻却」と言われると、平成14年の判例の立場と違うのじゃないかと思うわけです。弁護士法73条は、法の達成しようとする目的の範囲内で解釈しないといけない。正当行為や緊急非難といった違法性阻却の話ではなく、そもそも、濫訴が起きないなら、禁止されていないという解釈だと思います。

しかし、今回の解釈だと、銀行やクレジットカード会社や信販会社は、「法に反する行為をしているが、かろうじて違法性を阻却されている」という評価になりますが、それでいいのでしょうか。平成14年の「そもそも弁護士法の目的にそって解釈すれば、法に反していない。」という解釈の方が正しいのではないでしょうか。

投稿: こんにちは | 2012/02/17 00:50

ご指摘有難うございます。

ご指摘のクレジットカード会社の行為は、取り立て行為をするために債権を譲り受けているのではなく、そもそもカード会員に与信をすることが契約目的となっています。取り立て目的の債権譲渡とは契約の目的が異なります。
手形の取立行為は、手形法が取り立て裏書を明文で認めていますから、そもそも違法ではないといえましょう。
ファクタリングのケースは、たしかにグレーなところがあって、昔は議論がありましたが、ここはまあ事件性がないということになるでしょう。

なお、契約締結交渉で争いがあるといっても、それは事件性や争訟性がある場合とは言いません。

ご指摘の裁判例ですけども、これまた他人の債権の取立行為をするために債権譲渡を受けたものではありません。判決文によればゴルフ会員権市場から市場価格で買い入れた会員権をもって、ゴルフ場経営会社に預託金返還を求めるというものであって、その限りでは弁護士法73条に違反すると即断することは出来ず、正当な業務の範囲内かどうかを検討せよといっているだけです。
その検討の中には、弁護士法72条の潜脱に当たらないかどうかも考慮要素とされてますので、ヤミサービサー行為はこの判決に照らしても許されない例となるでしょう。

その意味で、ご指摘の最高裁判決と今回の判決とは矛盾はないと思います。

投稿: 町村 | 2012/02/17 01:24

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