arret:ピンク・レディーのパブリシティ権侵害が認められなかった事例
ピンク・レディーのパブリシティ権侵害をめぐって、最高裁が注目すべき判決を下した。
事案は簡単。ピンク・レディーの昔の踊っている写真を掲載してダイエット法を解説紹介する記事が女性自身に載った。これは無断で掲載されたものなので、ピンク・レディーのパブリシティ権を侵害するものだとして、損害賠償を請求した。
一・二審とも、請求棄却。
最高裁も、請求棄却の判断を支持した。
この判決で注目されるのは、最高裁としてパブリシティ権の意義・要件を明確にした初めての判断だということである。
従来から下級審レベルでは、パブリシティ権の概念が認められていた。その最初の著名な例がマーク・レスター肖像無断使用事件である。
最高裁レベルでは、競走馬のパブリシティ権を認めなかったとされる例がある。最判平成16年2月13日民集58巻2号311頁(PDF判決全文)であり、「競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても、物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき、法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではな」いとしていた。
これに対して本判決は、芸能人のパブリシティ権について、人格権に基づく肖像権の一環として認められるとし、その侵害となる場合について以下のように判示した。
肖像等を無断で使用する行為は、(1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、(3)肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である。
そして、女性自身のダイエット法記事については、専らピンク・レディーの写真の持つ顧客誘引力を利用する目的でピンク・レディーの写真を無断掲載したものとはいえないとし、権利侵害を否定したのだった。
パブリシティ権の存在それ自体については下級審で繰り返し認められてきたものであり、本判決はそれを追認したに過ぎない。しかし、パブリシティ権の意義内容と、その侵害となる場合の要件を明確化したことは、今後の実務の標準となりうるもので、大きな影響がある。
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