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2012/01/12

secret:秘密保全法制報告書パブリックコメント

秘密保全法制のための有識者会議の報告書がパブリックコメントに付されている。(締切は昨年11月であった)

秘密保護法制が現在以上に必要だという立場に立つとしても(この点についても異論は大いにありうる)、秘密保護は性質上その当否を争いにくいことを十分考慮し、極めて限定的に、恣意的な運用をできるだけ排し、かつ、事前チェックのシステムをビルトインした制度にすべきだ。

この観点で見ると、報告書の想定する制度は、かなり心もとない。

秘密保全法制のもとで保護される秘密は、特別秘密と呼ばれ、国の安全、外交、公共の安全及び秩序の維持の三分野を対象とされる。
このうち国の安全や外交についてもいささかきな臭いものを感じざるを得ないが、というのも西山記者事件を思い起こすと、あれが外交分野における特別秘密に値するものと判断されることは大いにありうるが、それを秘密として隠すことを正当化すべきかどうかには大いに異論がある。日米の密約は、民主党政権になって初めて公表された(少なくとも日本政府的には)わけだが、その費用負担のあり方については本来民主的な議論が必要だったはずで、密約という形で処理すべきことではなかった。
政治的な影響を恐れて隠すという行為を、外交分野の特別秘密という形で公認することになるのではないのか?

また、事項の限定列挙・秘匿の必要性により絞り込みが次に予定されているが、「特別秘密に該当し得る事項を別表等であらかじめ具体的に列挙した上で、高度の秘匿の必要性が認められる情報に限定する趣旨が法律上読み取れるように規定しておくことが適当」とされている。
しかしこれだけでは、果たして本当に高度の秘匿の必要性が認められる情報なのかどうかの担保はなく、上記の通り、政治的な影響を恐れて隠すという行為が正当化される可能性がある。

そしてその具体的な特別秘密の指定権限は、次のように書かれている。

各行政機関等が独自に情報の作成・取得を行っている現状にあることや、秘密指定の要否の判断は当該情報の作成・取得の原因となった具体的事務に即して行うことが適当であることに照らすと、秘密指定の権限は、原則として、特別秘密の作成・取得の主体である各行政機関等に付与することとするのが適当である。
確かに実務的には、作成・取得の主体である各行政機関等に判断を委ねることが適当であろう。しかし、それは同時にお手盛り的な指定も可能となるものであり、不当な過剰秘密指定をどう排除していくかという制度が必要なはずである。 本報告書には、そうした仕組みづくりをしようとした跡が見られない。

例えば、秘密指定に対して異議申し立てを行い、これを当該秘密指定機関とは独立した行政監察機関のようなところが判断するとか、そのような仕組みがあれば、まだましかもしれない。

それから、民事裁判で文書提出命令が申し立てられた場合に、民訴220条4号により公務秘密文書の提出義務は一定限度で免れることになっている。
しかし、一応は裁判所が、秘密性と審理の必要性とを比較衡量した上で、当該秘密保護の必要が開示による利益よりも大きいかどうかを判断する。
この秘密保護法制により特別秘密に指定されても、法改正が伴わなければ最終的に裁判所が判断することには変わらない。
情報公開法に基づく開示請求についても、最終的には裁判所の判断によることになる。

これが特別秘密となれば、民事訴訟ではインカメラ手続があるが、情報公開請求であればインカメラ手続を利用できず、結局裁判所は行政の言いなりとならざるを得ない。

このあたりの規定を手当てして、お手盛り秘密指定ができないような仕組みをギリギリまで作ることが必要だ。そうでないと、秘密保護法制は国民の知る権利に対する重大な侵害となりうる可能性がある。

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