law:おせちトラブルに思う民法
昨年のグルーポン経由スカスカおせち騒動に引き続き、今年は過量受注に起因するおせち遅配騒動が起こった。
毎日jp:おせち:3000個遅配で苦情殺到 ジー・ネットワークス
「長崎ちゃんめん」や「おむらいす亭」などの外食チェーンを全国展開するジー・ネットワークス(本社・山口県山陽小野田市)が販売したおせち約3000個が、年末までに注文先に届いていないことが1日分かった。「元旦におせちが食べられない」など1000件を超える苦情が寄せられたという。同社によると、前年より約3000個多い、約2万7000個のおせちの注文が寄せられ、県内の自社工場での製造が間に合わなかったという。1日までに配達をほぼ終えたといい、同社は「遅配分は返金に応じる」と話した。
別のニュースによれば、工場内の製造工程中にトラブルが生じて、予定通りの生産が出来なかったということもあったようだ。
実際過量に注文を受けて生産が間に合わなくなりましたというのはよくある話であり、今やっている朝ドラのカーネーションでも、小原糸子が生産をなんとか間に合わせる苦労がしばしば取り上げられている。
古い所では、ガラスの仮面の北島マヤが芝居の切符欲しさに、年越しそばの出前を一人で全部やるといい、ギリギリで間に合うというシーンがあった。
これらはドラマの話であり、結局のところ主人公は偉いという感動を呼ぶお約束だ。走れメロスのパロディでもある。
しかし現実にはそううまく行かず、納期に間に合わないでごめんなさいと信用失墜することはよくある。
それはともかく、この場合におせちの料金はどうなるのか?
大晦日のうちに配達するといって届かなかった、遅配だったというのであるから、要するに履行遅滞だ。
売主は、履行遅滞により生じた損害を賠償しなければならない。ただし、履行遅滞により契約を結んだ目的を達し得ないとまで認められないと、それによって当然に契約が無効になるものではない。損害賠償は支払っても、代金債権は残る。
ではおせちの宅配は、大晦日までに配達しないと契約を結んだ目的が達し得ないとまでいえるか?
法感情としては、当然だろうと思ってしまうが、おせち料理それ自体は元旦の朝でなくとも、夜でも食べれる。食品の売買契約としては、大晦日までという納期が絶対のものではない。
と考えると、履行遅滞により生じた賠償というのは、おせち料理の代金そのものよりはずいぶん安く、待たされてイライラしたという精神的な苦痛により評価すべきか、あるいは金銭債権になぞらえて代金額の0.001%くらいか、その程度であろう。
では上記の会社はなぜ代金を要らないというのか?
それは、端的に言って「損して得取れ」。おせちを元旦の朝から食べられますというセールスポイントで売っているのだから、その期待や信用が傷ついてはセールスポイントが無くなってしまう。もし実現できなければ無料にしますということで、せめてもの信用回復をしたい、そういうことで無料にするという経営判断だ。
学校で習う法律は、世の中の行動を半分しか律していないということである。
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コメント
訴えても弁償額は代金の0.001%くらいだろうって、仮に10000円のおせちとすると10銭ぢゃねえの(~_~;) そんな〜アホな。
投稿: お節 | 2012/01/04 20:22
これはいわゆる確定期売買にあたるから、履行遅滞とかそういう問題ではないのでは?(無催告解除では?)
投稿: chrysan | 2012/01/05 03:09