東日本大震災被災者向けADRに朗報
昨日の民訴IIの授業でちょうど紹介したばかりの個人版私的整理ガイドラインについて、今朝、新しいニュースに接した。
東日本大震災の被災者が、新たな債務を抱える「二重ローン問題」で、被災者の債務減免を調停する第三者機関「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」が、債務整理後に被災者の手元に残す資金の上限を、500万円にする方針を固めたことが23日、分かった。運営委が25日に正式に発表する。 破産法で定めている破産者の手元残金の上限は99万円が原則で、大幅な拡大となる。 500万円は、新居の購入費用や事業の再建に向けた資金に使うことができ、事業や生活の再建を支援する狙い。
このニュースの前提となっている債務整理とは、個人版私的整理ガイドラインという一般社団法人の運営によるものである。
→一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会
あらましはこのブログでも東北大震災被災者の二重ローンを個人倒産ADRで解消へというエントリで取り上げたが、上記のニュースによれば、さらに被災者の経済的再建が可能になるような運用の見直しがされたということだ。
なお、上記の500万円とは、気仙沼ひまわりの弁護士さんのFBコメントによると、「500万+義援金・生活再建支援金・災害弔慰金(+家財地震保険金も事案によって)」ということのようだ。
生活再建や事業再建にむけて、大いなる貢献が期待できる。
ただし、具体的な案件ごとに、対象債権者全員の同意が得られなければ弁済計画は成立しない。
そのためには、被災地の復興に協力するという精神論だけでなく、被災地の復興が日本社会全体の経済的発展と好景気につながり、債務整理に同意した債権者の利益にもつながるという構図が現実的なものとなることが必要である。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント