2012年の希望的観測
のっけから暗い話ばかりでは、縁起が悪いので、今年はこんなことが起こればいいなと思うところを想像してみた。
昨年は、原発事故の影響で、世の中の隠蔽体質があらわになった年でもあった。今年は、その反省の上に世の中が良い方向に向かうといいなと思う。
例えば、お役所的原子力ムラの典型的なやり方である、不都合なデータは黙殺というやり方が、下記の記事ではあらわになっている。
毎日.jp:核燃サイクル:直接処分コスト隠蔽 エネ庁課長04年指示
経済産業省の安井正也官房審議官が経産省資源エネルギー庁の原子力政策課長を務めていた04年4月、使用済み核燃料を再処理せずそのまま捨てる「直接処分」のコスト試算の隠蔽(いんぺい)を部下に指示していたことが、関係者の証言やメモで分かった。全量再処理が国策だが、明らかになれば、直接処分が再処理より安価であることが判明し、政策変更を求める動きが加速したとみられる。 (中略) 試算は通産省(当時)の委託事業で、財団法人「原子力環境整備センター」(現原子力環境整備促進・資金管理センター)が98年、直接処分のコストを4兆2000億~6兆1000億円と算定した。直接処分なら再処理(約19兆円)の4分の1~3分の1以下ですむことを意味する。毎日新聞が入手したメモは、経産省関係者が04年4月20日付で作成した。「部下(メモは実名)が昨日、安井課長に(試算の存在を)伝えたところ『世の中の目に触れさせないように』との厳命が下った」と記載されている。
部下は取材に対し、安井氏から「試算を見えないところに置いておいてくれ」と指示されたことを認め「目立たないよう他の資料も山積みにしていた、いすの後ろの床の上に置いた」と証言した。
この結果、再処理事業の推進が確固とした方針になったというのだが、まあ胡散臭い話である。
しかし、この安井氏も、別に私腹を肥やそうとしたわけではなく、国益として良いと判断していたのであろう。問題は、その判断自体ではなく、その判断を実現するための方法論として「不都合なデータは隠せ、都合の良い事実だけを集めてだそう」という態度に終始している点だ。
この態度、検察が不都合な証拠を出さなくてよく、都合の良い情報・証拠だけを出せるという制度と軌を一にするものだ。
検察の問題はともかくとして、実際、情報を公開することは筋力トレーニングにも似て、常に抵抗が強いものだ。情報を隠す言い訳には事欠かない。曰く、この情報はまだ確定的ではない、無用の混乱を招く、情報源に迷惑がかかる、独り歩きする、誤解を招く、プライバシーだ個人情報だ、前例がない等々。
これに対して情報を公開することのメリットは、戦略的なメリットがある場合か義務化されていて隠すと不利益が生じる場合にしかない。
こういう状況であるから、情報の公開を促進するためには、そのメリットを徹底するしかない。といっても戦略的なメリットは人為的に大きくすることが考えにくいから、結局、隠した場合のデメリットが事前に、切実に感じられるように制度化をするしかない。
企業情報については、内部統制の強化充実で、情報の公開義務付けが進んだ。国の情報も情報公開制度により進んだはずであった。しかしオリンパスの例も、原子力ムラの例も、まだまだ隠蔽体質で乗り切ろうとする誘惑が大きく、それで破局的な事故が起こらない限り、大体はなんとかなっている現状が浮かび上がっている。
それを変えていくことが、今年の一番の希望だ。
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