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2011/12/29

news:部下の女性に取引先への性的接待を命じて準強姦というニュース

表記のような驚愕のニュースが駆け巡った。

例えば読売online:「取引先の相手を」部下女性にわいせつ行為命令

実名で、次のように書かれている。

部下の女性に取引先とわいせつな行為をさせたとして、警視庁が音楽プロデューサーで会社経営の大沢伸一容疑者(44)を準強姦容疑で逮捕していたことが捜査関係者への取材でわかった。逮捕は14日。

続き

捜査関係者によると、大沢容疑者は11月、自らが経営する会社に勤務する女性に「取引先の男性の相手をしてほしい。そうしないと会社が潰れる」などと命令し、東京都内のホテルで男性とわいせつな行為をさせた疑い。

 同庁は、大沢容疑者が女性に対し、従わなければ解雇されると誤信させたことについて、準強姦罪の要件である抵抗不能な状態に陥らせたと判断した。会社の利益を図ろうとしたとみている。大沢容疑者は歌手の安室奈美恵さんらの作品を手がけていた。

読売onlineに掲載された記事はこれだけだったが、この時点で既に、弁護士や裁判官のtweetやFBメッセージでは疑問の声が溢れていた。仮に記事で指摘されている疑いが事実だとして、準強姦が成立するのかが疑問だというのである。

準強姦とは、刑法178条2項「女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。」というもので、最近の例では内柴容疑者が泥酔した女子柔道部員と関係を持ったとして、この罪に問われている。

果たして従わなければ解雇すると脅したことで「抗拒不能」といえるのかは、一般的な解釈からは疑問だ。

さらに、上記の読売の記事では触れられていないが、この記事が出た時点ですでに処分保留のまま釈放されていたのである。こうなると、ますます、逮捕の正当性が怪しいということになった。

そうこうするうちに、大沢氏本人がブログに、次のようにメッセージを上げた。

逮捕された事は事実です。しかし僕がこの事件に関与してる事は全くありませんし、身に覚えのないことと、完全に否認しています。
勿論現在は釈放されていますし、普段どおり音楽活動もしています。(以下略)

ここまで来ると果たしてなんだったのかと言いたくもなる。「逮捕」報道が、それも実名でなされることに、改めて警鐘を鳴らす事件といえよう。(なお、本来なら容疑者名は削って紹介するところだが、本件では本人がブログで潔白を主張していることも紹介する以上、実名の部分を削らないでおいてある。)
上記の記事は、釈放されたことにも触れず、実名で、捜査関係者の話を一方的に載せている。被疑者が有名人であったが故に、実名報道はインパクトが大きい反面、本人の声が伝えられる可能性も大きくなる。しかしごく普通の人が逮捕されてこのように報道されたら、本人が否認しても、その声を世間に伝えることは難しいであろう。

それとともに、報道に対する法律家たちの反応から、優越的地位を利用した性的サービスの強制に(準)強姦の成立が難しいということもまざまざと見せつけてくれた。

色々考えさせられるエピソードである。

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コメント

仮に報道内容が事実であれば,準強姦罪が成立するしないにかかわらず,実名報道の必要性はあるでしょう。著名な音楽プロデューサーが「枕営業」を強要していたわけですから。なので,

>「逮捕」報道が、それも実名でなされることに、改めて警鐘を鳴らす事件といえよう。

と言えるかどうか疑問です。報道側が,記事の真実性を「逮捕」という公的機関の判断(しかもよく考えてみればちょっと怪しい)で担保しているのがよろしくない,という意味なら分かりますが。しかしそれも読む側の判断でしょう。報道を控えるよりも,犯罪の成立が「逮捕」の必要条件でもなければ十分条件でもない,というルール自体を社会に伝える方が有益だろうと思います。

むしろ本件で気になるのは,「処分保留で釈放」の具体的事情です。後続の読売onlineの記事その他の記事では,大沢さんは

・14日に逮捕され,18日に釈放

とあります。刑訴法上の逮捕による身柄拘束は72時間が限度なので,もしも18日まで逮捕していたのであれば違法な身柄拘束です。事実はおそらくそうではなく,勾留請求が却下されたのだと思いますが,ならばその事態を処分「保留」と称するのはどうなのでしょうか。捜査機関の判断に対して裁判官がNOを突きつけた,という事実こそを報道すべきだろうと思います。

投稿: 懸垂百回 | 2011/12/30 10:17

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 株の取引会社 | 2011/12/31 10:21

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